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キミはマジメでインランアクマ
【学園物 官能小説】

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キミはマジメでインランアクマ-1

「お前、今日の抜き打ち何点だった?」
「95点……です」
「っはー、さすが。どうしたらそんな点がとれるわけ?」
「よ、予習、してますから」
「なるほど。んじゃ、俺も明日のために予習するから帰るわ」
「それは、ダメです……!」

そう言って彼女は、腰を上げる彼の前に立ちはだかった。
長い黒髪の三編みと黒縁眼鏡は、いかにもマジメな女生徒といった風貌だ。
実際、彼女――眞弓沙耶子(まゆみさやこ)はその外見を裏切らないほどのマジメさで、矢倉謙也(やくらけんや)を辟易させていた。
「だから、ダメですってば……それを提出するまでは帰れません」
彼女のこの言葉は三回目だった。
「だーからこんなん書けるかっつの」
彼女とは正反対に、だらしなく制服を着崩した矢倉のこの台詞も、同じく三回目。
うまく話をはぐらかし帰るつもりが、作戦は失敗。矢倉は苛ついたように机の脚を蹴りつける。衝撃で机上のプリントと筆記用具が床に落ちた。
「矢倉くん……」
眞弓はプリントを拾い上げ、鉛筆とともに机の上に戻して困ったような表情を浮かべる。
か細い声で彼女は言った。
「困ります……矢倉くんがそれを提出してくれないと、私も帰れないから……」
「アホか。お前だってバックレちまえばいいんだよ」
言って立ち上がり、中身の入っていない鞄を掴んで矢倉は眞弓を横目で見やった。
金髪に近い明るく染め抜かれた髪と短ラン姿は、いかにも不良といった風貌だ。
こめかみの痣は喧嘩の痕か、痛々しい紫色をしている。
実際、彼はこの宗形(むなかた)高校の一不良として幅を利かせていた。
今日もD組の生徒を殴って怪我を負わせたということで生活指導担当の教師に呼び出され、こうして反省文を書かされているというわけだ。
そしてそのお目付け役に抜擢――貧乏くじというべきか――されたのが、彼と同じクラスの生活指導委員、眞弓沙耶子なのであった。

「ばっくれるだなんて……」
「律儀に生活指導委員の仕事なんかしなくていいんだぜ」
おどおどと視線を泳がせて言う眞弓の言葉は尻すぼみになる。
矢倉も気をつかってか、なるべく彼女を怖がらせないように言葉を選ぶ。
しかし言葉とは反対に彼女の瞳はまっすぐに矢倉を見つめていた。
「でも」
教室を出て行こうとする矢倉の制服を、眞弓が掴んだ。
「どうにか矢倉君を更生できないかって……的場先生に相談されているんです」
「それに、やっぱりダメです……喧嘩なんて。こんな怪我して……」
こめかみに青紫色の痣としてくっきり浮かんでいる喧嘩の痕を見やり、眞弓は眉根を寄せる。
矢倉もまた細い眉を潜めて小さく舌打ちした。
そして眞弓の手を払いのけると、彼女に向き直る。
「こんなの怪我のうちに入らねーだろ」
十五センチは違う彼女を見下ろし、矢倉は鼻で笑う。
「的場が何を言ったか知らねぇが、俺を更生させるって? お前にゃ無理だ」
「どうして無理だなんて」
「俺と話してるだけでそんなにビビってたんじゃ、更生だなんて到底無理な話なんだよ」
肩を竦める矢倉。眞弓は再び矢倉の制服の裾を掴み、首を横に振った。
「びびってなんかいません……」
「へーえ」
矢倉は鼻を鳴らし、眞弓の顎を引っ掴んだ。
その瞬間、びくりと眞弓の肩が跳ね上がる。
「このくらいでビビってんじゃねぇかよ」
呆れたように息をつき、矢倉は言った。


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