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カコミライ
【大人 恋愛小説】

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カコミライ (1)やな女-4



‘変えてどうするの?’

 ベッドの中から携帯電話を眺めていると、ふと、そんな疑問が頭を掠めた。現実に誰かにそう問われたら、私はなんと答えるだろう。
(実際は友人にだってこの関係を話していないから、そんなこと有りはしないのに)

 そもそも、何故変えたいのか。それすら理由はつけれなかった。私の行動で一体何が起こるんだろう。

(例えば海と彼女が別れるとか?)
 私はそれを望んでいるのだろうか。

 海のことを好きかと訊かれれば、好きではあると答えると思う。一緒にいて楽しいし、ホッとして癒されるし。第一、嫌いな男に抱かれるわけがない。

 けれどその安堵感を愛情と呼ぶには、何かが足りない気がする。


 一つ言えるのは、何かを求めて変わることを望んだ訳ではない。
 物事に不変はない。何事にも変化はやってくる。そんな当たり前のことを私は、確認したかったのかもしれない。
 中々見つからない答えに、漠然とした思いを巡らせながら、私は今の自分の動作にハタと気付く。

「またやっちゃった」

 無意識の内に指先が唇を弄んでいた。最近の癖みたいなもので、気が付けば唇に触れてしまう。

 まるで、何かを求めるように。


♪♪♪♪
  ♪♪♪♪

 聞き慣れないメロディーが部屋に響いた。
 緩やかに上がる口角を抑えながら、私はベッドから体を起こす。

 鮮やかなイルミネーションを瞬かせながら、携帯電話はその存在を主張する。サブディスプレイに浮かび上がるのは、海の口からもう数え切れない程聞いた名前だった。

 海の大好きな彼女の名前。

 ‘美嘉’

 緩む口元に反して、指先は微かに震えている。その事実に気づかない振りをして、私はゆっくりと通話ボタンに触れた。


「もしもし?」

 意識してとびきり甘い声を出す。流石に鈴を鳴らしたような声は出なかったけれど、それでも媚びた響きは通話先にきっちりと届いた筈。


「もしもし?」

 駄目押しとばかりに、猫なで声でもう一度。聞き間違いとは思わせないように。はっきりと私の存在を主張する。

 返ってきたのは、静寂だった。空気が凍るってこんな感じなのだろうか。


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