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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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独占欲=醜いもの?-3

3 で、冒頭に戻る。
ショッピングモールの小さな時計塔の前で、緊張しながらアタシは憲を待っていた。
周りはカップルや家族連れで賑やかだ。アタシの横で、アタシと同じ様に恋人を待っているみたいだった女の子が彼氏と歩いていった。
服は、少しばかり胸が大きめに開いたやつを着た。スカートはやはり短い。馴れないブーツを履かされ、その上普段はまったくしない化粧までやらされた。ほんのり、と言うのが的確な表現だけど、正直…違和感がある。
こんな服は、本当に絶対着たくはなかったけど。けど、憲に喜んで欲しいしな。我慢だ、白雪。
ボーン……
時計塔の時計が十時を指した。
それと同時に、視線の先に憲の姿を捕えた。ジャケットにジーンズ。結構カジュアルな感じがする服装だ。
「し、白雪……なんだ、その格好………?」
第一声がそれか?失礼だな。まぁ、理解出来るけどさ。
「どうだ、似合うか?」
「に、似合う似合う」
憲はカクカクと首を縦にふる。
良かった。その一言で、アタシは報われる。こんな服装もたまには良いかなぁ
「い、行こうか?」
アタシの緊張が憲に移ったんだろうか。アタシの緊張は完璧にほぐれたのに、今度は憲が緊張してる。
笑いを堪えながら、アタシは憲の横についた。
「ちょっと待ったか?」
「いや、五分くらい前に来た」
憲の前に出て、振り向きながら答える。
「そうか。……それにしても、まさかそんな服を着てくるとは……」
「思ってもみなかったか?」
「あぁ。…それに、ここに来たいって言ったのもちょっと意外だったかな」
「ち、ちょっとな。アタシ達、付き合ってるんだから、たまには良いだろ?」
「さては、白木さんか八木に何か言われただろ?」
ギクッ……!!
な、なんでわかったんだ?
「図星だろ?やっぱりな。どっちに言われたんだ?」
「その……両方」
「両方!?二人ともにか!?」
驚く憲に、アタシは無言で頷く。
「ふ、服も、あの二人が貸してくれた」
「なるほどなぁ。おかしいと思ったんだ」
「いやだったか?」

「まさか!俺は嬉しいよ。何かこういう所、白雪は嫌いかなぁって思って、誘えなかったんだ」
なんだ。そうだったのか。
「別に、嫌いではないぞ。憲が一緒だったらだけど……」
「そっか。……よし、この際だ。あの二人に上手く乗せられてやろう。いろんな所、見てまわろうぜ」
「……うん」
そのまま、アタシ達はいろんな店をまわる事にした。
モールの中は綺麗に装飾されていて、華やかな雰囲気に包まれていた。
まずアタシたちは、雑貨店で揃いのちょっと渋い色のフォトフレームを買った。憲に『爺臭くないか?この色』と言われたが、なんと言われようが渋いんだ。仕返しに、女装の写真入れて飾ってやろう。
それから服を見てまわって、白いロングスカートを試着してみたら、憲が買ってくれた。アタシが遠慮するのを押しきってだ。
気付いたら、もう支払った後だったから、仕方ないから言葉に甘えた。まぁ、スカートなんて制服以外ひとつも持ってなかったけど、ひとつくらい良いかもな。
昼食を取ってからもいろんな所をまわった。
ゲームセンターにも行った。
電子音や説明する機械的な女性の声が木霊するなか、アタシはある一点に目を奪われた。
「わぁ……」
目の前には、子犬の縫いぐるみが山ほど入ったガラスの箱……、俗に言うUFOキャッチャーなるものだった。
アタシは犬が大好きだ。小学生の頃、紀州犬を飼っていた。名前は『源六』だけど、何か?
まぁ、その源六はアタシが中学に上がった頃に死んじゃって、それ以来…犬は飼ってない訳だが、犬好きはそのままだ。
「欲しいのか?」
「取ってくれるのか!?」
「良いぞ。どれがいい?」
「えっとなぁ。………あれがいいな!」
多分、目が輝いてたろうな、アタシ。
まぁ、それぐらい喜びながら、アタシは白い子犬を指さした。源六ソックリだ。多分、種類は違うけど、細かい所は気にしない。
「あれか……よし」
五百円玉を入れて、憲がボタンを操作する。
アームが動いて、源六の上で止まった。やった。多分取れたぞ。
と、喜んだのも束の間、アームは無情にも源六じゃなくて隣の黒いのを取ってきた。
ボトンと落ちて、取り口から出してみると……。
「『ゴエモン』だな」
憲が呟く。このマロな眉毛はゴエモンソックリだ。ゴエモンも確かにかわいい。でも……。
「ゴエモンは何時でも会えるからいい。源六取ってくれ!」
「源六…?」
「あの白いやつだ!」
首を傾げる憲をしり目にアタシは源六を指さす。
「もう名前つけたのかよ」
苦笑いしながら、再び憲はボタンを押して、アームを動かす。あれ…?
「憲、なんでお金入れないでできるんだ?」
「五百円玉入れたじゃないか。だから、六回できるの」
あぁ、なんだ。
「知らないのかよ」
「ゲームセンターなんて、来たことないからな」
胸を張るアタシに憲は苦笑いの『苦さ』の割合いを強めた。
結局、源六を取れたのは最後の六回目だった。


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