投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『It's A Wonderful World』
【コメディ 恋愛小説】

『It's A Wonderful World』の最初へ 『It's A Wonderful World』 25 『It's A Wonderful World』 27 『It's A Wonderful World』の最後へ

『It's A Wonderful World 4 』 -8

「ははは。全く、シュンは意気地がないなー」

突然、陽気に笑い出す父親。

「え、お父さん?」

「ふふふ。冗談だよ、冗談」

「え!?」

「だから、冗談だって。父さんこないだのG1でひと山当ててなー」

そう言いながら父は、分厚く膨れ上がったサイフをぼんとテーブルの上に置いた。

「あれ、おサイフ……?」

「ははは。どうだ、父さんのギャグは笑えるだろー」

何もなかったように、朗らかに笑う父を見て、僕は呆けていたんだ。
極度の恐怖から解放された安心感から。
そして、物事が飲み込めるようになって、僕は初めて。

「このクサレオヤジが!!!!!」

グレたんだ。
人間には絶対についちゃいけないウソっていうものがあるんだ。


「……ほんとにアイツはダメな親父だ」

僕は遠い目をして、そう呟く。
あれは暫くトラウマになった。
いや、アレだけじゃない。
あいつは昔からロクでもない嘘ばっかりつくんだ。


「シュンよ、今日、父さん会社クビになったんだ。今、不景気だからな……。悪いが学校を辞めて、明日から父の代わりに働いてくれ」

「ととととと父さん!? わかったよ、僕学校辞めて新聞配達とかするよ!」

次の日、ひどく欝な気持ちで求人広告を眺めていた僕に、父は言った。

「あれは、冗談だ」


「シュンよ、今だから言うが、お前の母さんは別にいるんだ。本当の母は、ナターシャというロシア人でな。今そのナターシャが危篤なんだ。会いに行ってあげなさい」

「ととととと父さん!? 僕、ロシア人の血入ってたの!? 全然気づかなかったけど、わかった! 明日会いに行くよ!」

翌日、偽りの母にロシアに行くためにパスポートを取らせてくれと必死に懇願していた僕に、父は言った。

「あれは、冗談だ」


窓の外を見ながら、僕は思う。
あのクソ親父、と。
なぜだろう。
怒りがふつふつと湧き上がってくる。
あいつを信用しちゃいけない。
そんなことわかってるんだ。
こないだだって……。


『It's A Wonderful World』の最初へ 『It's A Wonderful World』 25 『It's A Wonderful World』 27 『It's A Wonderful World』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前