DOLLHOUSE〜陥落〜-8
リカの身じろぎで目が覚める。
リカの意識は未だ微睡みの中にいる。
冷たかった身体は温かくなって規則的な呼吸がふうーっと伸びる。
大きな目が開いた。
だけど俺はその目をのぞき込むことができなかった。
俺がいることに違和感は感じなかったらしい。
忘れているわけではないだろう。
口元に手を当てて震えていた。
見ているのが辛かった。勝手なものだ。
「因」は俺にある。だから、これは当然の「果」だ。
俺はここから離れようと身体を動かした。
と、リカがしがみついてきた。
「もう…しないで。ね? お願いよ」
泣き出しそうな顔で懇願する。
どんな扱いを受けようとお願いしかできないのだ。
リカの生きる場所は俺のフィールドの中にしかなく、俺に頼るしかないことを知っている。
「わかったよ」
なんて可愛い。俺のお人形。
そっと抱きしめて額にキスをした。
私はお人形。
『ドールハウス』で管理されている。
優しいユリさんがなんでも言うことを聞いてくれる。
待遇は悪くない。快適といってもいい。
ここに来た頃は何度死んでやると思ったことか。
でも、それも今なら軽い陶酔の中で思い出すことが出来る。
甘美な夢の中で私は眠っている。
fin.