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【推理 推理小説】

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4th_Story〜手紙と2筋の涙〜-7

4.暗号(その3)

 皐神社へと着いた里紅達は、すぐに次の手紙を見つけた。と言うのも、神社に足を踏み入れた里紅達に、神主が封筒を渡してきたのだ。差出人の欄には、またΧという文字。
 里紅は、神主に手紙を渡した人について聞いてみたが、それはどうやら近所の子供だったようだ。確かに犯人が直接出向く訳も無い。子供は封筒と一緒に1枚の紙を渡してきたらしく、そこには、菖蒲中学の制服を着た、髪の毛がツンツンしている男子と黒髪ストレートの女子の2人組みを見つけたら、この手紙を渡して欲しいと書いてあったそうだ。神主に礼を言ってから神社を出て、その封筒を開く。中には、また暗号の書かれた手紙。
「……なんだ、これ」
 手紙に書かれていたのは、確かに暗号だった。否、暗号に見えたと言った方が良いだろう。なぜならそれらは全て、数式だったからだ。しかし、まだ中学2年生の里紅が理解するには、到底困難な数式が、そこにはあった。
『x^n+y^n≠z^n (n>a)』
『exp(iπ)=-b』
『{0,1,1,2,3,5,c,13,…}』
『1:(1+√5)/d』
『a-bc-d』
「えー、さっぱり意味不明なんですが」
 里紅が嘆く横で、沈黙する黄依。そして携帯を取り出し、操作し始めた。
「あ、最初から携帯で調べりゃ良かったんじゃ」
 そんな里紅の言葉も聞こえていない様子で、黙々と調べていた黄依が、口元を緩ませた。
「みっけ」
「ん?」
「フェルマーの最終定理、オイラーの等式、フィボナッチ数列、黄金比」
 黄依が並べた単語を時間をかけて認識し、理解する。
「それは聞いた事がある」
「一応説明しとくと、フェルマーの最終定理って言うのは、nが3以上のとき、n乗数は2つのn乗数の和に分けることが出来ないってヤツ。オイラーの等式って言うのは、eのiπ乗が-1になるヤツ。最も美しい数式って言われてる」
 饒舌に語る黄依。それに「うんうん」と返す里紅を訝しげに見てから、その先を続ける。
「次のフィボナッチ数列は、1つ前と2つ前の数字を足した数を並べた数列。そして――」
「黄金比は最も綺麗に見える比率の事、だよな」
「そういう事。だから、a=3、b=1、c=8、d=2って訳」
「ふうん。でもさあ」
 里紅はそれでもまだ納得出来ていない様子で、5つ目の数式を指差す。
「これはなんだ?」
 黄依も、里紅の指した数式を見て頭を捻る。こんな形の定理や公式は見たことが無いし、表記通りに数を当て嵌めてみても、3-1*8-2=-7、若しくは、3-18-2=-17。何の事かさっぱりだ。それでも、この表記の仕方を、どこかで見た覚えがあるのも確かだった。3-18-2。
「もしかして」
「ん?」
 またもや黄依は携帯で何かを調べ始めた。少しの間カチカチと操作をした後、画面を里紅に見せる。そこに映っていたのは、地図だった。
「住所か」
「そう。ここは皐市だから、皐市3丁目18番地2号」
 画面に映っている地図が確かならば、ここから走って15分の距離。走って15分。これまで全てがその距離だった。これは偶然なのか、それとも必然、犯人の思惑なのか。どちらにしろ里紅達に出来るのは、なるべく早く目的の場所に着く事。ただそれだけだ。


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