投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

こたつとみかん
【失恋 恋愛小説】

こたつとみかんの最初へ こたつとみかん 0 こたつとみかん 2 こたつとみかんの最後へ

こたつとみかん-1

『こたつとみかん』

雪寄せを終え部屋に戻ると、いつものようにダウンジャケットをハンガーに掛け、軍手を茶色の籠に投げ捨てる。身体は熱を冷まそうと必死になっているが、顔や手、足は寒さに震えていた。だから、滑り込むように両手・両足をこたつに突っ込む。

限りなくこの瞬間が好きだった。何とも言い難い快感があるのだ。仕事終わりに飲むビールの快感に似ているのかもしれない。だが、それは過去の話。

こたつの真ん中の菓子皿には大量に積みあがったみかんがある。それに手を伸ばし、一つ取ると皮を剥いていく。そして、口に丸ごと放り込む。彼女と居る時は特別な行為に感じられたのだが、今はもうただの動作にしか感じられなかった。

※※※

 雪寄せを終え、部屋に戻ると彼女はこたつに入って、みかんを食べていた。彼女は白い筋を丁寧に取り、一つずつ食べている。以前白い筋にはたくさんの栄養が入っているんだよ、と彼女に言ったことがあった。でも、彼女はわかっている、と言った。そして、こたつに入っているときは筋を取る必要性があるんだよ、とよくわからない理論を話してくれた。

「どうしたの? ボーとしてるけど」

「ごめん、ごめん」

そういいながら、こたつに入る。それとほぼ同時にはい、と彼女からみかんを渡された。二人ともこたつに入りながら、食べるみかんが好きなのだ。

「結婚しない?」

二人で黙々と食べている中で言った。彼女と付き合ってもう二年近く。だから、プロポーズをした。そこにムードも甘い言葉もない。ただありったけの気持ちを込める。

 彼女は驚かなかった。それどころか、みかんを食べる手を休めず、呟くように言った。

「……ごめん」

それからまた二人でこたつに入りながら黙ったままみかんを食べる。こたつに入っているのに寒さを感じ、口の中に放り込んだみかんも味がしなかった。

※※※

それからしばらくして彼女と別れた。悲しみが襲い掛かった時もあったが、心を切り替えることにした。彼女が自分の知らない誰かと幸せになっているだろう。だから、自分も幸せならなきゃいけない。そう考えることにした。そうしないと心が保てなかったのだから……。

End


『雑談BBS・1192作ろう小説で!・参加作品』


こたつとみかんの最初へ こたつとみかん 0 こたつとみかん 2 こたつとみかんの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前