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蒼い殺意
【純文学 その他小説】

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ブルーシリーズ:第六弾 蒼い恋慕 〜ブルー・れいでぃ〜-6

どうやら常連客らしく、時折
“キャハハ!”と嬌声を上げたりしている。一人が常連らしく、もう一人は俯いていることが多い。時折頷いてはいるが、興に乗っているわけではないようだ。

 少年のボックスからは、その女の横顔がしっかりと見えた。少し体を傾ければ、姿全体が見えた。赤いミニスカートにグリーンのロングベストを身に着けている。

おかっぱ風に前髪を揃えて、横髪で耳を隠している。クレオパトラを思わせる、髪型だ。際立った美人でもなく、愛くるしさに溢れているわけでもない。何の変哲もない、普通の女だった。
  
 が、少年の目が捉えるその女の手には。すらりと伸びた細い指が、
少年と同じくコーラを手にしている。Coca_Colaという文字の入ったコップは、まさに少年が手にしているコップだった。

  大事そうに抱えるそのコップの文字が、少年の目にグングン迫ってくる。その服装にはとても似つかわぬコーラ、それが少年には妙に生々しく感じられた。

 異国の地で出会った同郷人に見えた。そしてコップを持つ仕種が、いつでもどこでも見かける仕種なのに。この時この場における仕種が、少年の胸をざわつかせる。

 原色の服と同様に、厚化粧に見える。きついアイシャドウに隠された瞳の輝きが、少年には眩しい。鼻筋を高く見せるための陰、ベージュ色に見える唇、何もかもが少年の胸を高鳴らせる。

 グリーンのロングベストの下で、フリルの付いた真っ白いブラウスがキラリキラリと光っている。そして、ミニスカート。鮮やか過ぎる真っ赤なミニスカート。少年の心を燃え上がらせている。

  週刊誌のヌード写真も映画のラブシーンでも、これ程の早鐘は経験していない。少年の目は女の手に縛られて、少年の意には添わなくなってしまった。少年の心は、少年から離れてしまった。

 女の手が膝の上に置かれる。少年の視線が、女の膝小僧に移る。
少年の目が、桜色に輝き眩しく光る膝小僧にくぎ付けになってしまう。一瞬時、少年の意識が遠のく。そして我に返ると、視線の先に膝小僧が。遠のく、我に返る、膝小僧が。それが、幾度繰り返されたことか。

 女の視線が、少年を捉える。口にしていたコーラに思わずむせぶ少年。視線を落として、女の光線から逃れる。そしてまた女を。女の熱い視線が、少年を捕らえている。視線を落とす。再び視線を向ける。女の熱い矢が少年を襲う。耳に鳴り響く鼓動に急かされるように、少年が語りかける。

 否、語りかけようとした。しかし、非常にも女の視線はもうなかった。少年の語りかけに応えることなく、階下のバンドに視線が向けられていた。手にしているコーラを、一気に流し込む。ジンと喉にくる刺激の快感ですら、少年をいら立たせる。

 長い長い、少年の煩悶が続いた。
“どうして・・なぜ・・どうする・・どうやって・・どうして・・なぜ・・”

 悲しいことに、何をどう煩悶しているのか、少年には分かっていない。言葉だけが堂々巡りしている。少年の視線の先にいる女は、
食い入るようにバンドを見つめている。

 “ほらほら、待ってるんだぞ、ほら、ほら、待ってるんだぞ、”

 煩悶が、いつしか逡巡に変わっていた。靴のかかとが、コトコトと音を立てている。よしっ!と、ぐっと握り締めた拳も、すぐに力
が抜ける。気を取り直しての力も、かかとが床に着くと同時に緩んでしまう。


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