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岐路
【その他 官能小説】

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岐路-1

進路指導なんて冗談じゃない。
私は地元有数のお嬢様学校に通っていた。
小さいころからの夢を叶えるために、この女学院に進んだのだ。
小さいころからの夢、それは、幸せな結婚だった。

中高一貫のその学院で、6年間、私はそのことだけのために努力をしてきた。
子供の遊びとは違う。一流の女性の言葉遣いや身のこなしを研究し、身につけた。
投資も惜しまない。時間のある限り、高級サロンに通い、この美貌を磨き上げだ。
街を歩けば男達が振り返る。数あるパーティー会場で男達の視線を独り占めにしてきたのだ。

一流の男に請われてその妻となる。
シンデレラ。
幸せな結婚。
女の子にとって当たり前の夢だと思っていた。

私は、女学院に入学すると、仲人をしている叔母の家に通い、見合い相手を物色していた。
叔母は有名な仲人で、たくさんのお見合い相手を探す男女の情報を持っていた。
資料の中で、2人の男性が目にとまった。
2人の男性は、容姿、条件ともに申し分ない男性でありながら、長く見合いが決まっていなかった。
理由を聞くと、男性自信が見合いをよしとしない、と言うのだ。

卒業が決まったある日、私はその2人の男性を紹介してくれるよう叔母にねだった。
それも見合いではなく、何か別の機会を作って紹介しろという、少しムリな頼みだった。
私は、見合いを成立させるために、あらゆる手を駆使するその叔母も、
この2人についてはあきらめかけていることを知っていた。
プロの仲人である叔母にとって、お見合い以外のセッティングなど普段ならありえないが、
この2人については例外だった。

男性がお見合いを拒んでいることは、私にとっても好都合だった。
私にとって、見合であるかないかはどうでもよかった。
ただ、結婚を前提とせずに、男性のそばでその人となりを見られることが、都合が良かった。



達也は、司法研修所に通う27歳の研修生だった。
180センチを超えるたくましい体躯と、ワイルドな印象が気に入っていた。
叔母は自分の趣味も兼ねて、一緒にテニスをする機会を作ってくれた。
共通の趣味であることで会話は弾み、私たちはすぐに打ち解けた。

のぞみちゃんって、佐々木希の希? 本人じゃないの?
そんなに似てますか? 名前は合っていますけど・・・・
うん、似てる。 でも、希ちゃんの方が綺麗かも?
まあ、誰にでもそう、おっしゃるんじゃないですか?
ばれたか!
まあ、圭介さんたら!

アパート住まいで、毎日一人で食事をしている圭介に、私はチャンスとばかりに、
手料理を振舞う約束を取り付けてしまった。
そして圭介は、テニスの後、車で私を送り届けてくれた。

圭介に言い寄る女性は少なくなかった。どの女性も、賢く、女性として十分な魅力を備えていた。
圭介は、その中の何人かの女性たちと親しくなり、大人の関係を楽しんでいた。

圭介は、希を思い出していた。
圭介から見れば、希はまだまだ子供だった。
それでも圭介は、希のことが気になっていた。

希の瞳が見に浮かぶ。長い髪を揺らて希のしなやかな体が躍動する。
ボールを追う真剣な眼差し、ボールを捉える瞬間、猫のような大きな瞳を、更に大きく見開いた。
その瞳は美しさを通り越し、神秘的でさえあった。
若い女性らしい華奢な体から伸びる、細く長い脚が印象的だった。

子供でもなく、大人でもない。
時に少年のように見えたかと思えば、次の瞬間には恐ろしいほどの美しさを放っていた。


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