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所謂恋愛喜劇
【コメディ 恋愛小説】

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所謂恋愛喜劇2-5

「方法はあン時と同じ、デッドライン・ファイトだ。こンな女にうつつ抜かしやがッて……目ェ覚まさせてやるよッ!」
 ぎりっと音が聞こえてきそうな程歯を噛み締めると、オールバックは置いてあった、汚れたタオルを手に取る。そして、ぎろりと茜に目を遣る。
「…そこの女も良く見ときな、俺がコイツをブチのめす様をなァッ!」
 言うなり、オールバックは武に向かってタオルをしならせる。武は、それを掴み取る。
デッドライン・ファイトとは、お互い片手でタオルを握りながら争うガチンコ勝負であり、タオルを生死の境界線――デッドラインに見立ててその名がついたとされる。
(ちなみに、実際にはそんな勝負形式は無い。と思う)
「あん時って、いつだ?」
 いきなり、真顔で尋ねる武。一瞬、時が止まった。
「おいッ!まさか忘れたンじャねェだろうなッ!?」
 焦ったように叫びながら、オールバックはタオルを持った腕をひきつけ、その勢いを利用して武へと殴りかかる。どうやら、戦いの火蓋は切って落とされたようだ。
「ってか、お前誰だっ?」
 その拳をすんでの所でかわし、身を捻って身体の回転を利用した後ろ回し蹴りを放ちつつ、武は再度尋ねる。本気で覚えていないのか、本当に知らない人なのか……
「俺だよッ!『怒涛!嵐の学園血風録編第十二話 ドキッ!影の総番長!!』でお前と闘ッた、あの影崎聖(かげざき ひじり)だッ!コンチクショウッ!!」
*注*そんな話はありません…っていうかどんな話だソレ
叫びながら、オールバック…もとい聖は、タオルを思いっきり引っ張る事で武の体勢を崩す。そしてカウンターで合わせるように、肘を持ってきた。
体勢を崩されているため、武はかわせそうにない。
「武君っっっ……!!」
思わず茜が目を伏せた、次の瞬間。『ゴシャッ』と、鈍い音が響いた。
「…………」
 そっと、茜は目を開けてみる。
すると倒れていたのは、なんと聖だった。
あの一瞬、武は肘うちをかわすより早く、クロスカウンターの要領で拳を聖の鳩尾に叩き込んでいたのだ。
「……あん時と、同じ結果だな。前も言ったが、平常心を失っちゃ俺には勝てないぜ?」
 不敵に笑って、武が言う。そのこめかみには、真新しい傷が一つ。先程の肘が、かすっていたようだ。まぁ、それ以前に血がダクダクではあったが。
「けッ……やッぱ、覚えて、ンじゃねェか……手加減、ぐれェ、しろ…」
 倒れたまま忌々しげに聖は吐き捨てるが、その様子は何処か清清しい。
「したら怒んだろうが……茜っ、大丈夫か!?」
 聖との会話を切り上げ、武は茜へと駆け寄る。
「武…君……」
 手を縛っている布を解いてもらいつつ、茜は呆然とその名を呟く。
そして両手が自由になるなり、いきなり武に抱きついた。
「…うわぁぁああん、武くぅうううんっっ!!」
 そして、泣きじゃくる。ヒロインの特権、という所だろうか。
「すまねぇな…俺の所為で……」
 そんな茜の背中を優しく叩きつつ、武は申し訳なさそうに言う。
「ううんっっ!嬉しかったのっ…来てくれて、すっごく嬉しかったのっ!」
 そういう風に言われると照れるのか、武はぽりぽりと頭をかく。
そして一度深呼吸をしてから、言葉を紡ぎだす。
「…お前にまだ話す事があるっつったろ?これだけは、会えなくなる前に伝えたかったんだ」
 と、気付けば聖は手下二人に肩を借りて退散するところだった。ちらりと武を振り返って、聖はふっと軽く笑う。複雑な笑みだったが、恐らくは祝福しているのであろう。
彼らの間には、敵対関係だけでない色々があったのかもしれない。
「……?」
 茜は、武の言葉の続きを待っている。
そんな茜に視線を戻し、武はもう一深呼吸。
「………お前、すっげぇ滅茶苦茶な奴だし、一緒に居ると命の危険感じてばっかだけどさ……俺、お前と居るとすげぇ楽しい。お前の事…好きだよ。友達ってのと、違う意味で。」
 思いの丈を、そのまま言葉にする。そして、やっと言えたとばかりに、息をはいた。
一気に、疲労感と清涼感が武に流れ込んだ感じだ。
それを受けた茜の頬は、サクランボもかくやとばかりに赤く染まる。
「………あ、あたしも……あたしも武君の事…友達とかじゃなくて………好き…だよ…」
 そのまま、見詰め合う二人。
そしてその顔がどちらともなく近づき………
…二人は『恋人』になった。
…例え物理的に離れる事が前提であっても、二人はその関係を望んだのだから。


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