DOLLHOUSE〜食欲と性欲(琴音T)〜-2
「ああ、梶くん。ここ」
喫茶店に入ると、琴音は奥の席で一人ケーキを食っていた。
皿に2つケーキを載せて食っている。
「すげえな」
「どう?ケーキバイキング。美味しいわよ、ココ」
無邪気に笑う。
「食い過ぎとか気にしないの?」
「んー。たまにはいいでしょ?今日は運動するつもりだしね」
ふふ。っと意味深に笑ってパクつく。
「梶くん、甘いの好きでしょ?意外と」
好きだけど、さすがに琴音みたいな勢いでは食えんわ。
ウェイトレスがやってきた。
「えと、ブレンド。と、そうだな、レアチーズケーキ」
グラスとおしぼりを置いてウェイトレスが下がる。
「なんだかんだいって注文するのよね」
「悪いか?」
「ぜーんぜん。好きなクセに見栄はっちゃって食べないコもいるでしょ。ま、それも勝手だけどさ」
そういう気持ちもわからんでもないが。…まて?ソレはケーキの話か?
「誰がナニを食わないって?」
「山中くんよ。英文科の1年のコ」
知らんな。
ケーキとコーヒーが俺の前に置かれた。
ウェイトレスが下がると琴音がくすっと思い出し笑いをした。
「たぶん、コーヒーもブラックなんかじゃないのよ。私の手前、それ、我慢して飲んでるみたいだったわ」
「ふうん。俺はいつもブラックだぞ?」
「知ってる。ね?やける?」
「まあね」
「嘘ばっかり」
琴音はあっけらかんとした調子で笑った。
「おかげで健全で清らかなデートをしちゃったわよ。新鮮で面白かったけど」
「ひでーヤツだな」
自分のことは棚上げで言ってみる。
「あらん。梶くんに言われるとは心外ね。私が言い出したことじゃないのよ?お願いされてやむを得ず、よ」
「もし誘われたら、『やむを得ず』ついていった?」
「さ〜あて。それはどうかな?ふふふ」
艶やかに微笑む琴音。こんな風に笑われると騙されるよなあ。これじゃあ。
ぶぶー。
琴音が椅子を引いて立ち上がる。
「も、イッコ取ってくる」
皿をもって歩いていった。
でも、まあ。それで合点がいった。なるほどね。
男を食いそびれたのでこの呼び出しメールか。
戻ってくると、早速フォークを持ってクリームをすくい取る。