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【推理 推理小説】

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3rd_Story〜絵画と2つの裏向く名前〜-5

3.Connecting

 絵画は、火を消す間も無く一瞬で燃えてしまった。残っているのは、燃え切らなかった額縁の欠片と、壁や天井に残った焦げ跡だけだった。それから警察がやってくるまでの間、勿論誰も出入りする事は出来ないし、誰もしようともしなかった。こんな状況で出て行くのは、自ら、この状況は自分にとって不利ですと言っているようなものだ。因みに、最初に見かけた、里紅や学芸員以外の人たちは、里紅たちが戻ってくるまでの間に帰ってしまったらしい。その人たちについてはどうしようも無いので、とりあえず警察を待つ事にした。
 10分ほどで警察が来た。この後は1人ずつ事情聴取をするらしい。最初は受付に立っていた女性の学芸員が別室に呼ばれた。その次は学芸員が2人、恰幅の良い男性と、背の高い男性の順番で呼ばれ、次に、里紅、黄依、碧、最後に屡兎の順番で行われた。
 事情聴取は1人10分ほど。里紅たちが4人、学芸員が3人なので、1時間ほどで全員の事情聴取が終わった。だが、まだ帰ってはいけないらしい。特にする事も無いのか、背の高い男性の学芸員が里紅たちに話しかけてきた。ネームプレートには赤屋護<あかや まもる>と書かれている。それが彼の名前だろう。
「すいません。変な事に巻き込んでしまいました」
「いえ、構いませんよ」
 ここは碧に任せよう、と言うのが里紅たちの総意。とは言え、屡兎はどこかへ行ってしまったし、黄依は絶対に話したがらないだろう。残るは里紅と碧なので、里紅が碧に対応を任せた、という形になる。
「それに、まだ犯人が誰なのかも分かりませんし、あなた方の責任ではありませんよ」
 そう、これは明らかに事件である。いきなり全ての絵画が燃え出したのが、事故であるはずも無い。誰かが悪意を持って、何かしらの方法で、絵画を燃やしたのだ。さすがは笑顔の裏に鷹の目を持つ女、神木碧。里紅がそんな事を考えていると、碧に睨まれた。最近は女性陣が攻撃力を増している。いつの時代も男は女に弱いのだ。
 ふと気がつくと、今度は赤屋が里紅を見ていた。いかにも好青年という笑顔を浮かべている。だが、その瞳を見る里紅は、何か違和を感じた。不安定で、歪な何かを。それをどうやら相手も感じ取ったらしい。少し、眉をしかめている。
「赤屋君、もう帰っていいみたい」
 と、もう1人の学芸員が話しかけてきた。受付に立っていた女性だ。こちらの名前は茶山蓮<さやま れん>というらしい。先ほど、また警察に呼ばれていたが、開放された様だ。もう1人の恰幅のいい男性のネームプレートには、酉原克<とりはら すぐる>と書かれていた。
「皆さんもわざわざすみませんでした」
 こちらは里紅たちへの謝罪。また碧が「構いませんよ」と返す。
 こうして漸く自由になった里紅たちは、屡兎が戻ってくるのを待って、帰路についた。


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