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富子艶聞
【歴史物 官能小説】

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富子艶聞-9

その時、



( ・・・・・ )


自分を見つめる第3者の視線を感じた富子の目が
無意識にも その視線の根元に向けられる。


そこで彼女は 隣の部屋から襖の隙間より、部屋の中を覗き見る別の男の影を見いだしたのだった。



―――それから数刻の後、

居住まいを正した帝は満足気な笑みを浮かべつつ、
静かに障子をあけて部屋から立ち去っていった。


富子は先程まで着ていた着物を横に畳み
白装束、いわば寝間着に着替えて それを見送る。

部屋の前から帝の影が消え、渡り廊下を歩き去っていく足音も聞こえなくなったのと ちょうど入れ違いに
富子の部屋の奥の襖が静かに開き、1人の人物が姿を現す。

先程からずっと 富子と帝の情事に耳を傾け かつ覗き見ていた張本人。

主上の父君にして、先代ね帝にあたる

後花園上皇その人であった。
現天皇の父親だけあって、その風貌と雰囲気はよく似ている。

帝同様御忍びなのか、装束も烏帽子に寝間着なのである。

強いて違いを挙げるならば若さとは違う“落ち着き"と、顔に刻まれた無数の皺。それに、より熟成された男の“力強さ"といえるだろうか。





「 ・・・まさか主上が早くも足を運んでくるとはな。正直驚いたが 」


「 覗き見とは無礼ではありませぬか、上皇様 」


無礼と言いつつも、富子の口許にはどこか笑みが浮かび 嬉しそうな風情だった。


「 まさか父子揃って御台殿を“賞味"することになるとはな。先を越されたようで、少々妬いてしもうたのう。

・・・で いかがだったかな? 主上のお味の程は 」


「 あの若々しさと情熱は、ほんに私を夢中にさせてくれました。」


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