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魔性の仔
【その他 官能小説】

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魔性の仔Last-2

「先生ッ!いらっしゃらないんですか」

 不安に押し潰されそうになる気持ちを振り切って、早紀は静寂を破って突き進む。
 そして、中尊寺の自室の前で歩みを止めた。
 これまで以上に強い臭いに、バッグからハンカチを取りだすと鼻にあてた。

(臭いの発生源はここだわ…)

 恐る々、ドアノブに手をかける。

「先生、入りますよ…」

 そう云ってから、ドアを開けた。
 途端に、部屋に充満した汚臭でむせかえりそうになる。汚物と鉄錆びの混じったような臭い。
 彼女は、この臭いが何なのか気づいた。

「…あッ…ああ…」

 大きく見開いた目。
 青ざめた顔で見つめた先には、胸から腹をを大きく抉られた、血まみれの裸体がベッドに横たわっていた。

「…こ、こんな…ああ…」

 あまりの恐怖に錯乱しそうになる。思わず涙が溢れ出た。
 早紀は逃げ出したい衝動を必死に抑え、血まみれの裸体を確認するために身体を奥へと進めた。
 裂けた腹の中は、がらんどうで内臓が見あたらない。そればかりか、あばら骨の一部も砕かれて失われている。

 早紀はさらに奥へと足を踏み入れた。ベッドに横たわっているのが誰かを確かめたくて。

 そして、彼女は見た。

「…ああ…そ、そんな…」

 白目を剥いた目。大きく開いた口からは長い舌がとび出し、断末魔の叫びをあげたままの形相を思わせた。
 その顔は、写真でしか見たことはないが、まぎれもなく中尊寺聖美だった。

「せ…先生ッ!…な、なんで…こんな…」

 あまりの出来事に、胃液が逆流しそうになる。口許をハンカチで抑え、溢れ出る涙を必死に堪えようとしていた。

 その時、

「…待っておったぞ」

 早紀の後ろに、わらわらと男逹が現れた。
 彼らは一様に、返り血でも浴びたように顔面を赤く染めていた。

「…あ…や…」

 あまりの恐ろしさに声も出ない。同じ顔をした男逹に、周りを囲まれた。

 男の1人が早紀を覗きき込む。

「おまえ、刈谷の知り合いだな?」

 “刈谷”と聞いた途端、恐怖に埋め尽くされていた彼女の心に、わずかな勇気が湧いた。


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