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「瓦礫のジェネレーション」
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「瓦礫のジェネレーション」-26

家に入ると、母は深夜勤に備えて眠っていた。テーブルの上にメモがあった。
『先輩の家に泊まるものいいけど、今度からは夜中に電話するんじゃなくて、ちゃんと伝言を残してから出かけるようにしてちょうだい。母より』
かおりは心底ほっとしていた。母に心配をかけるのがなにより辛いのだ。起きてしまったことは仕方ない。拓也とももう終わりだろうけれど、彼が自分を置き去りにして帰ったのだと聞かされてからは、それでいいのだと思い始めていた。精一杯気力を振り絞り、夕方起きる母のために食事の準備をしようと、服を着替えて買い物に出た。

数日後。

その日の授業は午前中だけだった。かおりが友達の咲恵と里香子と三人で帰ろうと校門に差し掛かった時、門の側に記憶のある車が停まっていた。運転席のウインドーが下がると、そこから呼ぶ声が聞こえた。
「かおり」
かおりは固まってしまった。顔色は青ざめ、足が震える。
「ちょっとかおり、あれ誰よ。あんたの彼氏って川上先輩じゃなかったの?」
「でも、川上先輩よりずっとかっこいいじゃない。ねえ、誰よ?」
かおりが黙っていると、健志は車を降り、かおりの近くまで歩いて来た。咲恵と里香子に向かってにっこりと笑いかける顔は、そう言われれば確かに背が高くさわやかな好青年といった感じだ。
「君たちはかおりの友達?もしかして一緒に帰る約束をしてたのかな?ごめんね、かおりにちょっと用があるんだけど、いいかな?」
咲恵と里香子は互いに顔を見合わせてから、
「いいえ、私達はどうせ毎日学校で会ってますから。どうぞどうぞ。じゃあね、かおり」
と言うと、笑いながら走り去ってしまった。
健志は無言で突っ立っているかおりの背を軽く押して、助手席のドアを開ける。
「乗って」
その言葉に促されたようにかおりがふらふらと車に乗り込むと、健志も運転席に座った。

「悪いな、突然で」
健志はそう言うと、いきなり左手を伸ばしてかおりの右の胸に触れた。
「いやっ」
かおりは短くそう叫ぶと、体をよじって健志の手を避けようとする。しかし、シートベルトを締めた体はそう自由がきくわけもない。手でふり払おうとすると、健志は苦笑しながら、
「あんまり暴れるなよ。事故起こしたらシャレにならないからな」
と言い、なおもかおりの胸に手をのばして来る。信号で停車する度に指先は制服のブラウスとブラ越しに乳首を確実に捕らえていた。かおりの手の抵抗はいつのまにか止んでいた。
(あ、またあの時みたいに……いや、ヘンになっちゃう。好きでも無い人にこんなふうにされて感じちゃうなんて、私淫乱になっちゃったの?どうしよう……)
「どうした?もう感じてきたのか?」
「そんな……やめて下さい」
弱々しい声でそう言うかおりは、両足を固く閉じ合わせていた。頬も上気したように赤味がさしている。
「ま、いいか。ちょっと運転に集中するから大人しくしててくれよ」
車はいつのまにか峠道にさしかかっていた。健志の車は軽快にワインディングロードをとばしている。助手席のかおりは所在なげに窓の外を見ていた。
(これが好きな人とだったら、きっと素敵なドライブなのに……なんで私、こんな男の言うなりにこんなことしているんだろう……)
「なんでここにいるんだろうって顔をしてるな」
健志が笑った。車は道を外れて林道へ入り、少し行ったところで停まった。


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