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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-47

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 通りの向こう側から気付かれないように監視する紀夫は、家路に着く人達からすれ
ばかなり異様な存在。
 彼自身無断外泊を二日ほどこなしたというのに、それを棚に上げてまで彼女を尾行
するのは部活のことを思ってなのかもしれない。

 ――もしかしたら家に帰る途中かもしれないし……。

 しかし通りを行く彼女の足は家路と逆の方向に向き、さらにきらびやかになる歓楽
街へと歩みだす。

「やっぱり!」

 甘い期待など捨てて急ぐ紀夫だが、信号はなかなか替わらない。そうしている間に
も距離が離れ、三つ編みを解いたセミロングの後姿がようやく追える程度。

「く! 逃がさない!」

 ようやく緑になった信号を弾丸のように飛び出し、一路向うは彼女の元へ。
 今回も「おねえちゃん帰ろう」作戦で行くのかと思うと萎える気持ちもあるのだが
……、果たして?

「先輩!」

 足を引きずり、特に警戒している風でもない彼女に追いつくのは容易なこと。紀夫
は後ろを振り向いて小さく「やば!」と舌打ちする久恵の肩を掴む。

「どうして先輩はそんなこと……、お願いですから部のことも考えて……」
「もううんざり!」

 紀夫の言葉を遮る心の悲鳴に驚いたのは何も彼だけではなく、周囲五メートル半径
の人々。中には面白そうに成り行きを見ようとするものもいるが、それらも帰り道を
急ぐ人波に流されて去り行くのみ。

「いつも一人」

 周囲が再び二人を置き去りにしたあと、久恵は小さく呟いた。

「そんなこと、ないですよ。部活なら皆、紅葉先輩でもだれでもいるじゃないですか
……」

 別段彼女が紅葉と仲が良かったこともないが、今思いついて言葉にできるのは彼女
だけ。その頼りになるのかならないのか分からない存在も、今は山奥の施設に隔離済
み。

「君、そんなに部活好き?」
「好きって、そりゃ、楽しいし……、先輩は嫌いですか?」
「私は……嫌いになったかもね……」
「何でです?」
「んーん、間違えた。部活とかそういうレベルじゃなくてさ、なんていうのかな、私
を取り巻くフリをするもの全部嫌い。大嫌い。パパもママも、部活の皆も、君だって
……君だって……嫌いになっちゃった……」
「なっちゃったって……」

 微妙に引っかかる物言いに首を傾げる紀夫はすぐに切り口に気付く。

「どうして? 先輩は?」
「いいじゃない、別に……」

 醒めた様子の久恵はうっかり口にしたモノに気付いていない。


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