投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

……タイッ!?
【学園物 官能小説】

……タイッ!?の最初へ ……タイッ!? 135 ……タイッ!? 137 ……タイッ!?の最後へ

……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-44

**

 昨日の雨のせいでジメジメとしているが、太陽の輝きに比べて気温も低い。自転車
で走るには気持ちのよい、そんな時間だった。

「ふー、気持ちいい!」

 風を切るスピードで坂を下りる里美。

「待ってよ、里美さん!」

 きしむ車輪と磨り減ったブレーキにおっかなびっくりの紀夫。

「ねー、競争しようか?」
「そんな、だって俺場所知らないし」

 後をついてくるマネージャーのことなどお構い無しに立ちこぎになる里美に紀夫は
それどころではないと泣き言を言う。

「ここまっすぐ行くだけだって! それじゃよーいどん!」
「待ってよ〜」

 道が平たんになったところでようやく立ち漕ぎにする紀夫だが、その距離は広がら
ないだけで、縮まることが無い。

「へへーんだ、ここまでおいで〜だ」

 後をちらりと見る彼女は楽しそうに笑っていた。
 それはふりふりと揺れる彼女のお尻よりもずっと魅力的で、日頃理恵を乗せて鍛え
ている足にも力が入る。隣で笑いながらそれを見つめたいという純粋な下心に火がつ
いたから。

「……ふん、ふん!」

 気合で横に付け、ニヤリと不敵に笑う紀夫。

「お? がんばるね〜」

 里美も感心とばかりに真顔で頷く。

「負けないよ」
「ほ〜、ならさ、君が先に着いたらキスしてあげる」
「え?」
「ほら、がんばれ!」

 一瞬呆気に取られる紀夫を里美は容赦なく置いていく。

 ――キスぐらい!

 昨日のことを思い出せばそれぐらい。
 けれど漕ぐ力は帰り道のことなど考えていなかった。

**

「えっと、カレー粉はこっちで福神漬けはここと……、おーい紀夫のほうは?」

 カートを押しながら探すのはターメリックや唐辛子、他に季節のナスやトマト。ハ
ヤシライスでもつくるのか、そんな選択のメモに料理に疎い紀夫でも首を傾げてしま
う。

「いったい何を作るんだろうね」
「カレー? だと思ったけど……」

 里美は彼を振り返ることもなく、そっけなく答える。
 それは紀夫も一緒で、彼女の隣にはどうしてもいけなかった。
 理由は当然先ほどのレースのせい。
 結果だけいえば里美の健脚が当然のごとく勝利を収め、二人ともしばらく駐車場で
息を整えていた。
『あたしの勝ちだね』
 それだけいうと彼女は汗で濡れるシャツを鬱陶しそうにしながら、量販店へと向っ
た。
 残念そうだった。
 そう思うのはきっと最近芽生えた妙なプレイボーイ意識からだろうか?
 最近の自分は自分でも分かるほど調子に乗っている。
 その自戒を込めて里美には抑え目に接しようと思う紀夫だったが、キスという愛情
表現に心乱されているのも事実。そして惜しいと思う気持ちにも。

「里美さん」
「ん?」
「ん、なんでも無い」
「そ」

 素っ気無い態度。
 昨日の再会と比べたらずっと……。
 それがさらに紀夫の心を乱していた。


……タイッ!?の最初へ ……タイッ!? 135 ……タイッ!? 137 ……タイッ!?の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前