投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

……タイッ!?
【学園物 官能小説】

……タイッ!?の最初へ ……タイッ!? 117 ……タイッ!? 119 ……タイッ!?の最後へ

……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-26

「……はあ、しんど……」

 身から出たさびとはいえ置かれた境遇を嘆く紀夫。その間も「お代わり」を求める
スポーツマンの卵達にしゃもじを振るうしかない。

「がんばってるねえ」

 おちゃわんと一緒に来たのは里美の笑顔。

「はは、これぐらいどうってこと無いよ」

 彼女の前ぐらいは格好つけたいと強がるものの、彼自身は夕食がまだであり、皆が
おいしそうに食べているのを羨ましく目で追ってしまう。

「紀夫はどこで寝るの?」
「えっと、給湯室の奥が空いてるって言われたから、多分そこに布団しくと思う」
「ふーん、良かったね、畳の上で」
「うん。さすがに倉庫で寝袋って言われたら大変だし……」

 はははと笑いあう二人の間にぬっと伸びる手。しっかり茶碗を持っているそれは綾
のもの。

「はいはい、おしゃべりしてないで仕事しましょうね」
「なによ。少しぐらいいいじゃない」
「なに言ってるのよ。さっきから里美、浮かれっぱなしで見てるこっちが恥ずかし
いってば……そんなに彼氏が来たのが嬉しいの?」

 頭一個近く背の高い彼女は勝ち誇ったように見下ろしてくる。

「な……!」
「え……!」

 毎度紅葉から言われている「彼氏発言」が綾の口から出たことに驚くのは里美。一
方で紀夫は別の感想を抱く。

「綾までやめてよ。どうしてそうくっ付けたがるかな……」
「だってくっつこうってしてるんだもん」
「してない」
「してる」
「してない!」
「してる!」
「まあまあ、二人とも落ち着いて……あ、ほら、他の人のお代わりが……はいはいた
だいま……」

 言い争う二人の間をぬってお茶碗を受け取りごはんをよそる紀夫。その様子はどこ
か微笑ましいものでもあった。

**――**

 夕飯にありつけたのは後片付けの終わった午後八時。
 明日は朝四時に起きて朝食の準備。それが終われば放免との約束。紀夫はあとヒト
踏ん張りといつもより多めにごはんを食べる。
 食器を片付けた後はとくにやることもなく、布団を取りに廊下を歩く。
 合宿のメンバーは寝る前にストレッチが義務付けられているらしく、たまに開いて
いる部屋を見ると皆ゆっくりと整理体操をしていた。

「あ、紀夫君……ちょっといいかな……」

 聞きなれない声に振り返るとそこには和彦がいた。

「あ、佐伯君。こんばんは。えっと、何か用?」

 紀夫は特に和彦と仲が良いわけではなく、クラスも別。接点といえば陸上部だが、
紀夫はあくまでも女子陸上部のマネージャー。
 ただ、言葉が詰まるのは例の後ろめたさがあってのこと。本来なら愛理が来るはず
だった忘れ物を届けるというイベントを、ちょっとしたイタズラ心と嫌がらせで台無しにしたのが原因だ。


……タイッ!?の最初へ ……タイッ!? 117 ……タイッ!? 119 ……タイッ!?の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前