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なにげない一日
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なにげない一日-3

「あ、でもね」

尾野はにっこりと笑んで、付け足した。

「あたしの思い違いだった、みたいです」

そんな尾野に、何と返していいか分からずにいると

「大貫ぃ、尾野ぉ。昼休み、先生のとこ来いよー。お喋りの罰則させてやるー」

数学の安岡に呼び出されてしまった。
おれたちは目配せをして、罰が悪そうにハハッと笑い合った。




食堂で昼御飯を急いで食べ、足早に職員室へ向かう。ちょうど階段から尾野が降りてきたところだった。
二人で並んで安岡の元へ歩いていく。

「おー来たな。はい、これ。一年二組の教室に運んでくれ」

そう言って安岡は自分の机の上にある、薄い本の束を叩いた。
どうやら数学の問題集のようだ。
頼んだぞ。
それだけ言い残し安岡は職員室を出ていった。その手には、しっかり煙草が握られていた。

「よし、行こうか」

おれは三束。残りの一束は尾野が持ってくれた。

「昂哉くんはどうしていっつも一人なんですか?」

「群れるのが苦手だから」

「友達作らないんですか?」

「わざわざ作る必要ない」

「友達いらないんですか?」

「そういう訳じゃない」

「どういう訳ですか?」

「友達ってさ知らない内に勝手になってるものだと思うから」

「あぁ、そうか。そうかもしれませんね」

「そう。違っててもおれの中ではそう」

「そっか」

「おれからも質問。何で尾野はおれに敬語?」

「え、それはぁ…」

「尾野はおれを何だと思ってんの」

尾野は恥ずかしそうに笑った。僅かに頬が赤い。

「…友達!」

そんな談笑をしながらゆっくり運んだ。
そしたらチャイムが鳴ってしまい、焦って教室に戻った。


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