投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

青に染まる少女
【その他 その他小説】

青に染まる少女の最初へ 青に染まる少女 12 青に染まる少女 14 青に染まる少女の最後へ

青に染まる少女-13

「はぁ……」


気の抜けたような返事をして、汗をかいた紙コップを握ると、彼はトレーを引き抜いて組んだ自分の膝に載せた。


「あまっ……」


ストローを口に含んで中身を啜り、思わず呟く。

Mサイズの紙コップの中身はキャラメル味の甘いコーヒーで、上には生クリームまで載っていた。


「苦いより飲みやすいだろ?」


隣で志臣が言い訳のように呟く。

好みが分からなかったから、とりあえず甘い物にしたのだろう。

コーヒーショップの前でどれにしようか迷う彼の姿を思い浮かべると、少しだけおかしかった。

甘い飲み物をもう一口啜ると、志臣が小さく咳払いをした。


「あんたには今日からうちの事務所で生活してもらう」


「どういう……こと?」


本題に入ったのだと察し、隣を見ると、志臣はどこか遠くを睨みながらストローを噛み潰していた。


「石田莉子は死んじゃいない」


「え……?」


「見つかった死体は擬体だ。本物はまだ生きてる」


……莉子が、生きてる?


動悸が激しくなるのを感じた。


莉子が……生きてる……


ホントに……?


「ホント……に……?」


心の中で渦巻いた疑問を震える唇に乗せる。


「本当だ」


志臣の力強い言葉に涙が溢れた。


莉子が、生きてるんだ……。


名前しか知らない志臣の言葉は、なぜか信用できた。


青に染まる少女の最初へ 青に染まる少女 12 青に染まる少女 14 青に染まる少女の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前