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想-white&black-
【女性向け 官能小説】

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想-white&black-H-2

あんな人のことなんか気にせず与えられた環境を静かに過ごし、楓さんの機嫌をとって暮らしていれば良かったのか。

ふと瞼の裏にその姿を思い浮かべていた。

他人にも自分にも厳しく時に冷徹で、強引で自信家で人の上に立つことを当然のごとく生まれた美しく孤独な人。

恵まれた環境にいながら自由を制限されている。

そういえばあんな人でも誰かを本気で好きになったことはあるんだろうか。

あの容姿で今まで彼女がいないなんてことはないだろうし、ベッドでだって手慣れていそうに思えた。

彼に愛されて隣に立つ女性は一体どんな―――……。

そこまで考えてはっと顔を上げる。

胸の辺りが締め付けられるような苦しさが残っていた。

「私、一体何を……」

気がつけば楓さんのことばかりを考えている自分に愕然とした。

これではまるで……、あの人のことが"好き"みたいな……。

「ま、まさかっ。そんなの有り得ないしっ」

楓さんの側にいて散々弄ばれてるのに、どこに彼を好きになる要素があるっていうんだろう。

見た目は確かに文句のつけようもないけれど、中身は絶対近寄りたくないタイプなのに。

でも両親が亡くなって親戚から煙たがれていた私を連れ帰って、住む場所も食事も不自由なくしかも学校まで行かせてもらえている。

瑠海さんも瑠璃さんも優しくて親切で、一樹さんも良くしてくれて。

理人さんは相変わらず冷たくて厳しいけれど、邪険にしたりするようなことはない……と思う。

楓さんは時間の都合がつけば私のところにいる。

一緒にいると大抵セックスに持ち込まれてしまうが、それ以外に眠る時も起きる時も、食事の時も学校へ行くときも側にいるせいか、楓さんと暮らしていて寂しいと塞ぎ込まずにすんでいる。

一番辛い時側にいてくれたのは楓さんだった。

慰めの言葉をかけてもらったり優しくしてくれた訳じゃないが、実際落ち込む暇すら与えてくれない日々を過ごしていたお陰で立ち直りつつあるのだ。

これがもし親戚の誰かの所にいたらどうだっただろう。

間違いなく今より肩身が狭く、両親のことを思い泣き暮らしているような気がする。

胸の中がきゅうっと締め付けられて胸元の服を掴んでいた。

(私、まさか本当に楓さんのこと……?)

恋ってもっと楽しくて、ときめいたりわくわくしたりするものじゃなかったか。

好きな人のことを考えるだけで、幸せな気持ちになるような……。

だけど楓さんのことを考えると苦しいのだ。

あのヘイゼルの双眸が冷たくなる時、身体の底から凍えてしまいそうになる。

反対に熱を孕んだ唇で触れられると、その熱で溶けそうになってしまう。

快楽に慣れた身体が楓さんを求めている。

もしこれ以上溺れてしまったら……、私は一体どうなってしまうのか。


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