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魔法使いの告白
【女性向け 官能小説】

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春告鳥 1-2

ここ2年は『彼女』はいない。

会社勤めの頃につきあっていた彼女は転職したとたんに切れた。
店の常連さんだった彼女は過ごす時間が違いすぎて、自然消滅した。
同業者の彼女は価値観がまるで違っていて、そのうちフラれた。

まあ。すすけてきたかなあ。
割とだらけた格好しかしなくなったし。仕事の反動かねえ?

仕事ではそれなりの雰囲気を保つようにキッチリ作っている。

彼女がいないからだらけてしまうのか、だらけているから彼女ができないのか。

ゴミを置いて戻ると、シロが小屋から出てしっぽをふっていた。

「お前は僕が好きだよなあ。可愛いヤツ」

頭をなでてやる。
犬を相手に我ながらサミシイこと言ってるな。

「でも、眠いから散歩は昼過ぎな。あふ。」

さて、もうひと眠り。
僕は階段をゆっくりと上がった。





坂井圭。32才。
大学をでて会社勤めをしていたが、3年前から「BlueMoon」というBarの従業員になった。

店主は僕の姉の藤川美佳。
姉貴は結婚していて2才の子供もいる。旦那ともうまくやっている。

母が亡くなった時に店をどうするかでちょっともめた。
もともと母がやっていて、姉貴は高校卒業後、会社で事務員をしていたが、一身上の都合というやつで店を手伝うようになった。
姉貴も結婚していたし、僕は会社員だったから、もう潰してもよいと思っていた。
けれども、姉貴はそれを良しとしなかった。
旦那を説得し、続ける道を選んだ。

その時にスナックからカジノ風のBarになった。雰囲気を楽しむお客もいれば、ゲームや姉貴との話を楽しむお客もいる。

飲み物は格安、そのかわり、ゲームでお金を少しばかり落してもらう。

景品はあまり高価にしていない。
ここを充実させると、悪のりする輩が出てくる。

僕は黒のスーツをきっちりと着て対応する。
バックに髪を流して黙っているとどっかの組の若っぽく見えるそうだ。まあ、この仕事じゃハッタリや威嚇も必要だからいいんだけど。

スーツは常連のお客さんの店でオーダーメイド。
ブランドものではないが、生地も仕立ても一級品だ。決して安くはない。

このあたりは姉の考えで、
色(ブランド)のついたもの、安っぽいものは、そこからお客の夢が破綻する。ということらしい。

そういうわけで、『制服』は姉のセンスにまかせている。

店の奥の部屋で、いつものだらけた格好から着替えて別人になる。

「ん、圭ちゃん、男前できあがり」

姉貴が肩をぽん、と叩いて店に出ていく。

これが僕のお仕事。


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