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魔法使いの告白
【女性向け 官能小説】

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魔法使いの告白 10-1

私はベッドサイドに置かれたコンドームを一つとった。
銀の平べったいパッケージ。

孝文が普通なのか、圭さんが普通なのかわからない。
孝文との行為が怖かったのは妊娠することをおそれていたからだ。
でも、圭さんが同じように、コレを使わなかったとしたら私はやっぱり怖がっただろうか。

少し違う気がする。

圭さんはもちろん、私の身体を気遣って使ってくれているのだと思う。
もしも避妊に失敗したらどんな顔をするのだろう。

「どうしました?」

圭さんが私の手の中のものを取り上げた。

「圭さんは、避妊に失敗したら、とか、考えたりしますか?」
「やっぱり…怖いですか?」
「今は、分からないんです。あんなに怖かったのに。でも、圭さんと一緒になるのは全然… !」

そこまで言ってわかった。
妊娠したとしても、孝文が責任とって結婚すると言わないだろうことは何となく分かっていた。
でも孝文が結婚すると言ったとしても、その選択肢を私自身が選ばなかったに違いない。
圭さんとなら。それもいいな、と思える。文字通り、昨日今日のつき合いでしかないのに。

「全然?」
「いえ…」

私は自分の言いかけていた言葉を思い出すと、なんだが恥ずかしくてもごもごと語尾を濁した。
まるでプロポーズだ。

「…僕の母はね、所謂シングルマザーなんです。もう亡くなってますけど。姉貴は私生児。僕は一応認知はしてもらいました。つまり、僕と姉貴は父親が違うんです」
「え…」

あまりにも唐突で重い話に、言葉がでない。

「僕は母に育てられたんですけど、僕が小学校の頃に父親が亡くなって、向こうの親が、…僕の祖父と祖母に当たる人だけど、僕を引き取りたいと言ってきて。父親っていっても顔も知らないんですよ。ホント、生物学上のね、親。母が会わせないようにしていたのか、すっかり父親から忘れられていたのかは、もう分からないんですけどね。…子供を2人も抱えて大変だったろうに、結局、母は僕を放さなかった。あの店はもともとスナックでね。母は水商売で、僕らを育ててくれました。僕は父親どころか、母をも軽蔑し、子供の潔白さで母を傷つけた頃もあったけど、今は感謝しています。苦労の中で折れずに僕らを育てたんだから」

圭さんは淡々と話した。
そんな圭さんが、自分の父親と同じ間違いを犯すわけはなく。

「ごめんなさい」

自分がしてきたことも、こんな話をさせたことも、とても愚かしい。彼を傷つけたかもしれない。

圭さんの指先が私の頬を撫でた。

「いいんですよ。良い機会だしね。美里さんには知っておいて欲しかったし。…姉貴が母と一緒にあの店をやって。そのおかげで、僕、大学出してもらって、サラリーマンやってたんですけど、3年前に母が亡くなってね。勤めていた会社、やめてあの店に入りました。そんときに姉貴の趣味でああゆうBarになって。姉貴も顔役とうまくやってるけど、荒事もなくはないから。現金を賭けたがる客は少なくないんです。やめるか退出してもらえない客はつまみ出すしかなくて」

ああ、それでみかさん、ウチの武闘派って。


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