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バカの印
【青春 恋愛小説】

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バカの印-2

「…無駄って何よ」
「は?」
「…悠介の何が無駄だって聞いてんだよ!んな事あたしの前で言っていいと思ってんの!?バカ!!あんたは悠介以上のバカだ!」
「…なんで庇うの?神山の事。好きなんだろ?言えよ。つぶしてくっから」
「それは…っ…別に好きじゃないよ…幼なじみだから…」
……好きじゃないんだ…。
俺は窓の横にズルズルと脱力して座り込んだ。
「だったら俺と付き合ってよ」
「……出来ない」
「なんでだよ」
「…悠介の事悪く言ったから」
「しょうがないだろ、ホントの事なんだから」
「……ムカつく。あのねぇ、悠介に文句つけていいのはあたしだけなの!悠介バカにする人とは付き合えませんごめんなさい!帰ってくださいお願いします!!」
「…さっきから悠介悠介ってうるせーんだよ!言われなくても帰ってやるよ!」
「もう来んなよ!」
「死んでも来ねぇよ!」
逆ギレかよ…情けねぇなぁおい…。
再び窓を覗き込むと、早歩きで帰って行く井畑の後ろ姿と、茫然と立ちすくむ麻紀の横顔が目に入る。
「麻紀」
俺がそう呼ぶと、こっちに振り返って目を丸く見開いた。
「聞いちゃった…ごめん」
「…ううん、あんなデカイ声出したら気付くよね…」
「………」
「ねぇ、そっち言っていい?」
麻紀の意外な質問に俺は少し戸惑った。が、答えを待たずに麻紀は窓を乗り越えて部屋に入ってきた。
「…おい」
「へへっ、いいじゃん、減るもんじゃないし」
俺はまだお前が発した一言から立ち直れてねぇんだよ…。
「あのね…さっきの嘘」
「嘘?何が?」
「…悠介の事好きじゃないって言ったの」
まさか、好きじゃないどころか嫌いだってか?
最悪だな…。
「…悠介…」
「麻紀」
「え?」
振り返ってこっちを向いた彼女の唇を、俺の唇で塞いだ。
…何も言わせたくなかった。
この後麻紀の口から出る言葉が怖かった。
こうするしかなかった。
優しく唇を離す。
「…ごめん…こないだの事も…今の事も…」
「何言ってんの」
「え?」
麻紀は俺に抱きついて言った。
「…全然いいに決まってんじゃんバカ…」
「………」
混乱から何も返せなくなる。
「大好きだバカ…」
あぁ…そーゆう事…
俺も相当な激ニブヤローだな…
「…ちょっと」
「…何さバカ」
「調子こいてバカバカ言い過ぎじゃねぇの?」
「だってバカじゃん!バカなもんはバカ!あたしの気持ちに気付かないあんたはバカ!」
「はぁ!?だったらてめぇも一緒だろ!」
「何よ、分かりづらい悠介が悪いんですー!」
結局お互い様だ。
2人ともバカだって事だ。
「…ねぇ悠介」
「何」
「もう一回して」
「…いいよ」
俺たちは再びゆっくりと唇を合わせた――。


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