魔法使いの告白 9-4
「嫌でしたか…?」
嫌。というはっきりとした拒絶は今となってはあまりなかった。
「…恥ずかしかったです」
ぷい。っと横を向いて口を尖らせてみせる。
精一杯の抵抗。
「感じた?」
「知りません」
ぷい。
覗き込むように私の目を見ようとするから、今度は反対方向に向いた。
なんだか、私、シロみたい。
「可愛い。嬉しいな」
圭さんがくちびるをついばむ。
「あ…」
きゅ。と私の中が締まったのが自分でも分かった。
圭さんがニヤと笑っていて。あ、やっぱり?
「いいよ。すごくいい気持ちだ。」
抱きしめられたまま、ゆっくりと揺れた。
こうしていると私の方の目線の方がほんの少しだけ上になる。
いつもだぼっとした服を着ているから気が付かなかったのだけど、意外に背が高い。
がっちりした肩。
シャープな輪郭をしているし、着やせするタイプなのかもしれない。
はむ。っと肩を口にする。
軽く歯を当てているうちにちょっと噛んでみる。
なんかいい感じ。この感触。
適度に柔らかいっていうか、噛みごたえがあるというか。
「なにやってんですか?いたいです」
「保険です。」
そうそ。そんなことを言ってた人、いたし。
「あーあ。歯形がついてる。野郎は諸肌脱いで着替えなんてフツーですからね。胴着とかは着ても組手とかするとはだけますよ」
「あっ! ごめんなさい。どうしよう」
そうだった。
「コイツは保険じゃなくて、勲章です。道場で見せびらかしましょうか」
「えー」
「嘘です。肩こり湿布でも貼りますよ。からかわれそうだから。でも、見せびらかしたいのもホントです」
だからもう気にすることはありません、とでもいうように圭さんが笑う。
ああ、私の圭さん。カッコイイ。ベタ惚れだ。メロメロだ。
「う、すごく感じるよ。いい…いい?」
「うん?」
気持ちいいよ?もちろん。
緩やかな動きの中、微妙な語尾に私も聞き返すような返事をした。
圭さんの右手が胸に触れる。
左手は私の背中を支えたまま。