魔法使いの告白 9-1
カチャ。
そんな音がして、私は目を覚ました。
上半身を起こす。
ここは?どこ?
人の気配にふりむくと圭さんがバスルームから出たところで髪をワシワシとタオルで拭いていた。
私と目が合って、一瞬タオルが止まる。
う。
私は目線をはずした。だって、全裸なんだもの。
「失礼。まあ、気にしないで」
隠すでもなく平然と歩いてきて、裸のままベットに腰掛けた。
俯いて頭をタオルで拭き続けている。
そうだった。私、圭さんと…。
腕を通したままになっていたバスローブを引き上げて着た。
手首のアザが気になって、全部はだけてたのだけど腕をぬかなかった。圭さんも特に脱がそうとはしなかった。
圭さんにはばれてたし、腕を抜かなかったからといってアザが隠れていたわけでもなかったけど。
「あれ?」
でも、私なんで、眠ってたのかな?
確かに圭さんとして… すごく気持ちよくて… あれ?
それから記憶がない。
「…あれ?」
ベットに腰掛けた圭さんが肩をふるわせ笑い出す。
頭のタオルを肩へと下ろすと、ぐいっと前髪を後ろに流した。
「僕が抱いたこと、覚えてますか?」
「覚えてます…私ったら、いつのまに…」
なんだかすごく恥ずかしい。
「最後までイッて、そのまま力が抜けたかと思うと、ふぅーって息はいて。ん?って思ったら眠ってました。あまり体調も良くないのに無理をさせてしまったと思ったのですが、美里さん少し微笑んでらして。すごく穏やかな寝息をたてて。僕、本当に幸せな気分で、しばらくあなたの寝顔をみてました」
うわー。私ってかなりひどくないですか。それ。
彼の腕が伸びてきて私の頬を包む。
「うん。顔つきも顔色もずっとよくなりましたよ」
軽く頬にくちづけられて、うれしくなる。
「圭さんのせいです」
「僕のせいなんですか?」
違うな。
「圭さんのおかげ。です」
私がいいなおすと圭さんが頭を掻きながら
「そんなこと言われると、またしたくなってしまいますよ」
といった。
私は笑って応えると、圭さんが立ち上がってベッドから離れた。
ハンガーに掛けられたロングコートのポケットを探り、なにかにぎって戻ってきた。