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織露府(オルロフ)家の花嫁
【その他 官能小説】

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織露府(オルロフ)家の花嫁-8

 その一瞬の千夏の顔をカメラがとらえる。
「!」
 川原の心臓が大きく脈打った。羞恥心で今にも泣き出しそうな表情を浮かべた千夏の顔はこのうえなく可憐で、美しく、扇情的だった。
「…だ、大事にして…、いただきなさい…」
 千夏の父がそう声をかけた瞬間、バッという強い光が視界を包んだ。一部始終を撮影しているプロのカメラマンだ。気がつくと、自分以外にも数名が近寄ってきて、千夏と痛ましい顔つきでそれを見やる両親の姿をカメラやビデオに収めている。
 両親が自分たちの席に戻ると、淳哉の父の旋太郎が大広間じゅうに宣言するように、淳哉に向かって言った。
「さあ、この場で夫婦睦み合い、結婚を完成させなさい。」
「はい。」
 新郎の淳哉はおごそかに返事をすると、タキシードを脱ぎ始めた。ズボンを脱ぐと、ビキニタイプの下着の股間は既に大きく勃起していた。
 川原のカメラはその間も千夏をとらえていた。ベッドの上で身体を丸くしたまま、不安そうな表情を浮かべ、下唇を噛んでじっと耐えている。なだらかな肩が小刻みに震えていた。
 全裸になった淳哉がベッドに身体を横たえ、千夏の乳房を背後から両手でそっと押し包む。
「あっ…」
 千夏は小さな声をあげて、反射的に淳哉の手を掴み、胸から離そうとする様子を見せた。しかし、淳哉に耳元で何か囁かれると、コクンと頷いて目を閉じる。
(畜生、いいなぁ…)
 淳哉は美しい隆起全体を思いのままにこね回している。シャッターを切る川原の心の中では淳哉に対する妬みが大きく膨らんでいく。
 親指と人指し指がキュッと千夏の乳首を摘まみ、指先でクリクリと転がす。
「あぁン…」
 千夏が眉根を寄せ、色っぽい声を洩らした。ベッドを取り囲むカメラのフラッシュが一斉に光る。
(そうだ、もっと感じろ!)
 思いっきりアップで撮った乳首が勃起している。川原は撮影するうちに、いつしか、千夏の身体を愛撫している手が自分の手のように錯覚し始めていた。
(よーし、つぎはオ××コを弄ってやるぞ!)
 愛撫する手は、千夏のお腹を滑り、すでに十分濡れた股間に潜り込んだ。



「さあ、この場で夫婦睦み合い、結婚を完成させなさい。」
 旋太郎の声が響く。
(ああ…、とうとう…)
 まどかは、ベッドの上で身体を固くした。なだらかな肩が小刻みに震えている。 結婚式の二次会などで、よく、みんなで囃したてて新郎に、新婦の頬にキスさせるという企画がある。友達の結婚式に参加して、そういう企画を目にし、自分ならとてもできないと思っていた千夏だったが、これからすることは、それどころの話ではない。
 両家の親族や友人知人、みんなの見ている前で淳哉とセックスしなければならないのだ。
 姑になる真貴子から聞いたところによると、このしきたりは、ルネサンス時代に遡ると言う。当時、王侯貴族の結婚の大半は政略結婚であり、結婚が成立することは政治的な意味合いを持った。そこで、初夜にはカーテンをへだてただけの隣室に証人が待機して、無事に初夜が実施されたかどうかを見届けたのだ。ローマ法王の息子でルネサンス君主のチェーザレ・ボルジアが結婚した時には、フランス国王ルイ12世が控えの間で立ち会っている。
 織露府家では、この伝統がまだ生きているのだ。しかも、時代を経るにしたがって、カーテンの向こう側で不正が行われないよう、初夜の営みが行われる部屋に直接証人を入れるようになり、その後、証人が不正な報告をしたという疑惑が起きてからは、結婚式に参加した全員が見届ける中で、新郎新婦に性交させるようになったのだと言う。
 ベッドに横たわった淳哉の両手が背中から抱きしめるように千夏の乳房を掴んだ。
「あっ…」
 千夏はとっさに淳哉の手を掴み、胸から引き離そうとする。
「ダメだよ、がんばらなきゃ…、僕の奥さんになるんだよ。」
「で…、でも…」
 千夏は淳哉を振り返り、哀願するような視線を向けた。
(そんなこと言ったって…)
 千夏は泣き出したくなった。いくら淳哉に言われても、人前でセックスするなど、とてもできそうにない。


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