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やわらかい光の中で
【大人 恋愛小説】

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やわらかい光の中で-2

■第1部

□サクラ ナミキ?決断?







「ありがとね。せっかく休んだのに・・・。」
「ううん、いいの。なんか理由ないと休むの気がひけるし。」
「えっ会社にはまだ言ってないんでしょ?」
「うん。
 なんつうの、自己満足。」
「そっかぁ。でもありがとう。」
「いいえ。…仕事忙しぃんでしょ?」
「…うん…」
「じゃっ。また明日ね。」
「うん。…オヤスミ」
「おやすみなさい。」


 山上裕美は、必要事項だけ伝え内藤慎治との電話を切った。
 既に夜の12時を過ぎていた。

 慎治との結婚は3ヶ月前に突然決まった。
 彼とはまだ知り合って半年に満たない。
 幼い頃から結婚を夢見るような少女ではなかったが、漠然といつかは結婚するのだろうと思っていた。
 しかし自分の結婚がこういう形で決まるとは全く想像していなかった。
 裕美でなくとも普通の女性ならば、予想することは難しかっただろう。
 なぜなら、慎治と裕美はお互いを殆ど知らない状態で「結婚」という目的があって始まった関係だからだ。



 午前中に済ませるべき仕事の整理を一通り終え、山上裕美は注文したコーヒーを手に、いつもの席が空いている事を確認すると、無言でその席に向かった。
 彼女は午前中と午後に各1回ずつ、8階の自分のオフィスから階段を使って、この1階にあるコーヒーショップまで休憩がてらコーヒーを飲みに来る。

 それが昨年まで煙草を吸っていた彼女のブレイクスタイルだ。

 煙草を止めよと思った時、仕事中どのタイミングで席を立ち、どうやってブレイクを取ればいいものかと悩んだ。
 それを悩み続けて約1年が過ぎた頃、このままではいつまで経っても煙草を止められないと思い、ある日突然煙草を止めた。暫くの間、適当にビルの中を歩き回ったり、外に出てみたりしながらブレイクをとっていたが、ある日ビルの正面入り口の脇に、オープンスペースがあることをふと思い出した。それからは、そこでコーヒーを飲みながらブレイクをとるようになったのだ。
 来客者が担当者を待つために造られただけの小さなスペースだが、簡単な打ち合わせなどがその場でできるようになっている。ランチの為の使用は硬く禁じられているが、そこでブレイクをとっている社員も少なくない。
 煙草を吸っていた頃、必ずコーヒーを買ってから喫煙所に行っていた。喫煙所で煙草を吸いながらコーヒーを飲むのが、彼女の定番のブレイクスタイルだったのだ。
 今は、煙草を吸う換わりにヨガの呼吸法で何度か深呼吸をする。深くゆっくり息を吸い、全身に新鮮な空気を行き渡らせ、その息を深く吐くことで、体内の良くない物が鼻や毛穴から抜けていくような気がした。息を吐く時、気が付くといつも目を閉じていた。そしてその目をゆっくり開けると、なんとなくすっきりする気がするのだ。
 煙草を止めるために始めたヨガの呼吸法だったが、今ではそれも大切なブレイクの一部になっていた。
 ブレイクをとる時間は、以前、煙草を吸いに席を立っていた午前10時前後と午後3時以降と決めた。デスクワークの多い彼女は、健康のために積極的に歩くことにしている。それは煙草を吸っていた頃からだ。

 そして、この時間の窓側左1番奥のこの席が、彼女の特等席となった。


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