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魔法使いの告白
【女性向け 官能小説】

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魔法使いの告白 7-2

「ドラッグとかはされてないんですね?」
「ええ、それはないです…」

そういうと、坂井さんは両腕を放してくれた。
どすんと身体を落とし込むようにソファーに座って、大きく息を吐いた。

「…失礼しました。こんな街でも、ドラッグの話はあるんです。僕自身、売人らしい人を見たことがあって。つい…」

坂井さんはぐいぐいとビールを飲み、ぺきりと潰した。歪んだ缶をテーブルに置くと、それは軽い音を立てる。

「私、ばかなんです。出張とか研修とか、言われて。電話もメールもなかなかつかまらなくて。そのうち連絡するのが怖くなって。おかしいと思っていたくせに考えないようにしてたんです。本当は分かっていたくせに見ないふりで…!こんなこと、坂井さんに言ってもしかたないってわかってるのに」

坂井さんはソファーから立つと冷蔵庫を開け、またビールを取り出した。

「…私、今日、坂井さんの部屋に行きました。でも、いらっしゃらなくて。」
「え?何時ですか?」

坂井さんが冷蔵庫の前でこちらを振り向く。

「2時頃です。」
「ああ、ごめんなさい。空手道場に行ってました。僕、一応師範代やってるんです。ボランティアですけど」

「え?そうなんですか。すごい…」

坂井さんがビールを持って戻ってきて再びソファーに腰掛けた。

「これだけは中学から続けててね。…それで?店にいらした…」
「そう…です。会ってもしょうがないのに。最低です、私。坂井さんに甘えようとしてるんです。なんてずるい!」

自分でどうしたいのか分からなかった。
ずるいと分かっていながら、押し掛けて。どうしようもないことを言って。

ぷしっ。
坂井さんが二本目を開けた。
一口呑んで缶をテーブルに置く。
それからソファーにもたれて天井を仰いだ。

「…北野さんはきっと、罰がほしいのですね」
「罰…ですか?」
「そう。全部告白してこっぴどくなじられたかったのではないですか?そうすることで、彼との事を終わりにしたかった。ヤケっぱちの…自傷行為にも似た感じを受けるんです。」
「そう…かもしれません」
「でもね、ずるいのは僕も同じなんですよ。」

坂井さんは天井を向いたまま続けた。

「僕は知ってたんですよ。彼が複数のオンナノコとつきあってること」

ずっと見ないで、考えないでいたことを坂井さんから聞かされる。
やっぱりそうだったんだ。と思った。

「店に来るとき連れてくる女の子はいつも違ってましたから。だから、僕はあなたに告白したんです。僕はあきらめられないから待ってる、みたいなことを。僕こそ最低です。いつかあなたが彼から離れると思ってました。そうなったときにつけ込めるように。こうして、彼の、お客様のプライベートを話しているバーテンも最低でしょう?それも当事者に」

何も言えなかった。
話を聞いても坂井さんがずるいだなんて思わなかったけれども、どんな言葉を返していいのかわからなかった。
坂井さんは身体を起こしてビールをまた一口だけ呑んでテーブルに戻した。


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