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胡桃の殻を割るように
【片思い 恋愛小説】

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胡桃の殻を割るように-4

ピロリロリーン♪


翔にだけわざとそっけない着信音を設定してあるからすぐわかる。


『夕飯、食いに来いよ』

メールでだけそっけなくなる翔の口調はなんとなく男らしくてドキリとする。

そういえば母さんたち今日は深夜まで仕事入ってたな……でも、と思い出してメールを返した。


もうあのときのような子供じゃない。
だから大丈夫。
私は、大丈夫。


そうやって正しい言葉を盾にして、邪にキューピッド役の幼なじみの仮面を被る。

『大丈夫だよ。夕飯くらいはちゃちゃーっと作っちゃうから(笑)ありがとうございますっておばさんに言っておいて♪あ、あと翔もサンキュね、わざわざ』

メールは距離が近くなったようで、やっぱり遠いと思う。
メールでは普段よりわざとらしく明るくなる口調の自分が羨ましくて妬ましかった。



本当……、こんな風に翔に話せたのならどんなにいいだろう。


『アズじゃなくて桃さんが作るんだろ(笑)』


………わかってる。
私には、キューピッドなんておこがましい。

悪魔より、……酷いかもしれない。

『意地悪だなぁ(怒)!お姉ちゃんの方が料理得意な“だ・け”です?(笑)一応手伝いますよーだ!』


………ずっと昔から、翔はきっとお姉ちゃんが好きだ。



私なんか、お呼びじゃない。

アズなんて、全然特別じゃない。



翔が、桃姉ってお姉ちゃんを最後に呼んだのはもうずっと、ずっと昔。

翔はいつからか、お姉ちゃんを呼ぶのに、桃さんと言うようになった。


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