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魔法使いの告白
【女性向け 官能小説】

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魔法使いの告白 6-3

「うん、熱はなさそうね。きょうはそれで我慢なさいね」

ふわりとこちらの間合いに入ってくる感じが心地いい。

姉弟だというが顔だちは性差によるのか、特に似ているとは思わない。
でも、この優しい雰囲気は確かによく似ている気がする。

『特製スクリュードライバー』はつまるところ、オレンジジュースだった。
ダクトがむき出しになった天井を見る。

なんで、私、ここに来たんだろう。
ふと。思い出して、カードを出した。

「これでべットできるんですよね?」
「うん、そうよ。わかる?」
「難しいことはわからないけど、数字のとこにおいたらいいんですよね」
「おっちゃんが、おしえたぎょうか?」

みかさんと話していたら、隣の人が割り込んできた。

「高田さんはおいたしちゃだめよ。許さないんだから。」

みかさんは笑いながら、高田さんという人にメッ。っと軽くにらんだ。
本当に可愛い人。

「赤か黒か。奇数か偶数かで賭けるとこなら、わかりやすいわ。」
「配当すくないけどなー」

また、高田さんが割り込んでくる。

「高田さん。そのお口を閉じましょ?」

みかさんの指が高田さんの頬を軽くつねった。
私がくす、と笑うと高田さんがにっこりと笑い返してくれた。
別に不愉快ではなかった。たぶん、高田さんは面倒見の良い人なのだと思う。

私はカードを黒においた。
どうでも良かった。
勝っても負けても。
このカードを手元からなくしたかったのかもしれない。

結局、黒は出なかった。

「残念。 赤だったわね」

私は席を立った。

「帰ります」

私はみかさんに会釈して扉に向かって歩いた。
外に出ると、すぐ扉が開いて坂井さんが出てきた。

「どうかされましたか?顔色が悪いです」

私はくすっと笑った。

「お姉さんと同じこというんですね。大丈夫、ごめんなさい。心配かけてしまいました」
「いえ」
「それじゃあ」
「あの!」

背中を向けた私を呼び止める。

「そこの喫茶店で待ってもらえませんか。あと、30分程で行きますから」

坂井さんは、斜向かいのお店を指さした。
私はこくりと頷いて喫茶店へと歩き出した。





喫茶店で坂井さんを待つ間、私は何度も帰ろうかと迷った。
自分が何をしたいのか全くわからなかった。
ただ、坂井さんに会いたかった。


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