投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『六月の或る日に。』
【悲恋 恋愛小説】

『六月の或る日に。』の最初へ 『六月の或る日に。』 16 『六月の或る日に。』 18 『六月の或る日に。』の最後へ

『六月の或る日に。2』-5

ーーーーそしてそれは、舞台の最後、クライマックスに起こった。


『俺、今日は本気で言うから。』

王子と姫が想いを伝え合うシーン。

長いこと夏樹は黙っていて、一体どうしたのか、もしかしたらセリフ忘れたのか、とかハラハラしていたら、夏樹はいきなりそんなことを言い出した。


な、なに言ってんの…?

夏樹の行動が全く理解できない。でも王子の時と言葉遣いが違う。

いつもの夏樹がそこに立っている。

それだけは、はっきりとわかった。


『ごめんなさい先輩!今だけわがままやらせてくださいっ!』


夏樹は舞台袖に向かってそう叫ぶと、あたしに向き直って、はっきりとこう告げた。


『俺、春美が好きだ。』

ーーーーーえ?


力強い視線とその口調から、すんなりと耳に入ったその言葉に、最初は耳を疑った。会場も演技でないことに気付いたのか、どこからかざわつき始めた。


『初めて会った時から、好きだった。……一目惚れ、したんだ。』

『……うそ。』

『嘘じゃねえ。』


ようやく出た言葉を、夏樹は真っ向から否定した。


だって信じられなかった。ずっと一緒にいた夏樹が、友達として一緒にいた夏樹が、自分を好きだなんて。

そんなこと、考えもしなかった。


『信じて。俺、本気で一目惚れしたの初めてなんだ。お前とサークルで会った時、まじですげえ嬉しかった。友達でも、春美の側にいられるならそれでいいって思ってた。』


夏樹が、だんだんあたしに近づいてくる。夏樹の声が、目が、あたしに真っ直ぐ向かってくる。


『でも、もう無理。』


夏樹はそう言って、あたしの右手を取った。そして、『王子』と同じように跪くと、あたしの右手の甲にキスをした。


『六月の或る日に。』の最初へ 『六月の或る日に。』 16 『六月の或る日に。』 18 『六月の或る日に。』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前