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魔性の仔
【その他 官能小説】

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魔性の仔C-7

「よろしくね。もし、彼女を引き取る人が居ないなら…」
「エッ…?」
「もし、誰も真弥ちゃんを引き取らないのなら、その時は私が…」
「先生…」

 中尊寺の秘めたる思いに、刈谷は胸を打たれた。

 ──自分は真弥を助けたい思いだけだった。その先のことまで考えていなかった。
 だが、中尊寺はちゃんと考えていたのだ。

「朝早く行って来ます。真弥の事、よろしくお願いします」
「もちろんッ」

 互いに交した目が、暖かな色に染まっていた。


 同時刻の那国村。
 小高い場所に建つ寺院のさらに上、山肌から湧き出す水のせせらぎが暗闇に音を刻む。
 水は一ヶ所に集まり、急な勾配を流れ落ちて窪地に溜り川へと渡る。
 その途中に設けられた水車小屋に、馬遥遷を含む村の重鎮と鵺尊が集まっていた。

「──話では、あの方は男に匿われてるのか?」

 囲炉裏にくべた薪が鈍い飴色の光を瞬かせ、男達の顔だけを浮かび上がらせる。

「昨日、その者が村を訪ねてまいりました。刈谷という名の者です」

 鵺尊は、昨日の出来事を老人達に報告する。

「刈谷の身体からは──あの方─の匂いがしておりました。間違いなく匿っておるかと」
「おお…ならば…」

 村を幾つかに分けた区域──奥乃院の長が、思わず声を上ずらせた。

「刈谷という男の行方は?探り当てたのか」
「どうやら山向こうかと。ただ今、若い衆が探っております」
「そうか。ならば、早々に突き止め、刈谷もろとも捕らえるが得策じゃ」

 馬遥遷を除く各々が区域の長達は、意見を合わせた。
 そんな中、鵺尊は意を唱える。

「その取り戻すべき算段ですが、私に任せていただけないかと…」

 光に浮かぶ長達の顔が鵺尊を見た。

「何故じゃ?そやつの棲家が分かれば、すぐにも連れ返しに行けるであろう」
「お言葉ながら、刈谷はこの村を訪れております。彼が他言しておれば、我が村が知れてしまいます」

 各長に対する鵺尊の説得が続く。その長を束ねる長、馬遥遷は黙って行方を見つめていた。

「ならば如何いたす?」
「刈谷の──性─を利用いたします」
「刈谷の…性を?」

 繰り返された言葉に、鵺尊は大きく頷いた。

「刈谷は必ずここに戻ってまいります。だが、我々は捕らえるのではない。
 あやつの棲家を乗っとるのです」

 ──なるほど…良計じゃ。

 馬遥遷と同様、長達は──意外─という顔をみせる。
 捕らえればバレる危険性がある。ならば、逆に乗り込もうという大胆さ。

「それならば、相手にも気付かれまいッ」

 皆が頷く。──鵺尊の謀り事に満足したようだ。

「では鵺尊。この件はそなたに任す。吉報を待っておるぞッ」
「お任せを。必ず成功してみせまする」

 鵺尊は板の間に額を付けて一礼すると、水車小屋を出て行った。
 その後を目で追いながら、長達は感嘆の顔で互いを見つめた。

「さすがに長──馬遥遷様─が推される男じゃ。良う理屈を捉えておる」
「まことに…あれなら、──次の我らや若い衆─を束ねられましょう」

 長達は、意味深な言葉を吐いた。


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