魔法使いの告白 4-3
「ふふふ。ほら、帰るんだって」
私も立ち上がってほこりを払った。
わふわふ。息を切らせたシロに表情はないけど、瞳が笑っている、と思える。
坂井さんはシロのリードを私に持たせてくれた。
なんだか楽しい。
でも、私から坂井さんに話しかけにくくて二人黙ったままアパートに戻ってきた。
シロが勢いよく水を飲んでいる。
「ごめんなさい…」
これだけは言っておかないといけない。
勿論、坂井さんは、孝文のことも承知で告白したのだろうけど。
うれしかった。だけど、私には孝文がいる。
「いいんです。とりあえず僕の意向が伝われば。あきらめられないから言ってみました。しばらくは待ってます。たぶん。…いつまでも、とは言いませんけど」
自嘲ぎみに坂井さんが笑った。
最後の一言に優しさを感じる。
坂井さんならその気になれば、いい人が見つかる。どんな人でもつかまえることができる。
「それじゃあ、僕は…」
そういうと、アパートの階段を上っていく。
日は傾いていた。
時計は4時前だ。これからご出勤ってことよね。たぶん。