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堕胎
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堕胎-2

「この家に移る前は僕等も貧しくてね、子供が出来ても諦めるしかなかったんだよ。あれには辛い思いをさせてしまって、本当に可哀想な事をしたと思っている」
 いつしか水やりも終わり、物思いに耽った顔で鬼灯を眺める叔母。
 庭に佇む叔母を振り返り叔父さん叔父さんは続ける。
「鬼灯はね、昔は子供を降ろす為によく使われたそうだ。堕胎した事は仕方のない事だったと言っても、彼女にはいつまでも納得出来ない事なんだろうね」
 叔母を見る叔父の顔は、叔母と同じく悲しげだった。
 しかし、僕は何か釈然としないものを感じていた。
 果たして、僕が生まれられなかった子だとして、両親の重荷になっている事をどう思うだろうか。
 いつしか日は暮れ、庭の黄白色の花が夕日に染まる。
「子供は」
 僕は庭にいる叔母に声を掛けた。
「子供は、お母さんの笑顔を見るのが一番幸せなんですよ」
 僕の言葉に振り返った叔母は笑顔を見せた。
「ええ、何の話かしら?」
 そう言って庭から上がる叔母に、僕は答える。
「圭太君が寂しがっていますよ」
 自分の事を言われ、眠い目をこすりながら起きあがる圭太君。
 大きな欠伸をする圭太君を叔母は抱き上げ、圭太君も甘えるように首にしがみつく。
 その時、庭の向こうで火薬の弾ける音と共に大輪の花火が咲いた。

終。
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