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こうして恋が始まった
【青春 恋愛小説】

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こうして恋が始まった-2

「また明日の朝、ね。」
手を振る。
「また〈明日の朝〉ねっ!」
笑って〈明日の朝〉という所を強調してきた。

久しぶりに1人で帰る。うん、纏り付いて来る相手がいないせいか、いつもより爽快。
いつもの帰り道。のんびりのんびりお散歩気分。
だけど、10分後自分の異変に気が付く。
おかしい、寂しいなどと思ってしまう。
なんか右側が寒い気さえする。
「あれ?」
首を捻る。
気付いたらあたしにとって右側にいる彼は当たり前の存在になっていたのか?


家に着いてからも落ち着かない。何か忘れ物でもしてきたみたい。
この違和感は何だろう。
不意に、放課後の光景が頭を過ぎる。
他の女の子と楽しそうに談笑する根岸君の姿。
何か嫌だ。自分以外とそんなに楽しそうにしている姿、見たくない。
あたしにだけ、その笑顔を見せて欲しい…。
「…っ。」
自分の気持ちに気が付いて、息を飲む。
いや、ほんとはもっと前から気付いていたのに認めなかっただけ…。
―よし、決めた―


次の日の朝、何だかそわそわして普段より早く家を出る。
20分は早く出てきた筈なのに、いつもの場所にもう根岸君はいた。
一体いつも何時から待っているのだろう。
胸がぎゅっと掴まれたような感じがした。
「おっはよ!」
満面の笑顔で、元気一杯に手を振る姿。
ほっとする。
いつもの光景。いつものようにあたしの所まで走ってくる。
いつもと違うのはあたしの気持ち。
会いたかった。
顔が見たかった。
話がしたかった。
恋する気持ちが溢れてくる。


2人並んで歩く。彼が自分の右側にいる。ただそれだけなんだけど。
こういうのがいい。
〈あたしは、根岸君が好き。〉
心の中で呟いて、気持ちの確認をする。
ちらりと右側を見ると見慣れた横顔。
周りを確認する。よし、誰もいない。
あたしは無防備な彼の左頬にキスをした。〈好き〉の気持ちを込めて。

「…うわっ!」
一瞬の間の後、珍しくうろたえた姿。
「前のお返しだよ。」
にっこり笑ってみる。
見れば、真っ赤になって左頬を手で押さえている。


「不意打ちは、ずるいでしょ。」
「不意打ちじゃなければ、いいんだ〜。」
これもお返し。
ちょっと悔しそうにしている。
「…お返しって俺、右にしたし。」
よく覚えてるな。
「だって、いつもあたしの右側にいるから?」
そう、あたしの右側が根岸君の位置。
するとちょっと、きょとんとした後思い出したように
「どうせなら、もっと違うトコがいいなぁ〜。」
いつもの調子に戻り、顔を近付けてくる。
「あ、人が来た。」
そう言って誤魔化した。
「ちぇっ。けち〜。」


そう言いながら、彼はにかっと破顔した。

〜Fin〜


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