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ギックリ腰!
【ショートショート その他小説】

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ギックリ腰!-1

 ああ、何て事だ。

 この、私までもが…

 この、私までもが…

「アナタ」

 この私までもが、妻と同じ痛み苦しみを味わうとは。

 何て事なのだ。

 これは神々が私に与えた試練なのか?

 それとも…


「アナタ」


 運命のイタズラってヤツか?

 正直、夢であって欲しい。

 だが現実は、夢ではないのだ。

 絶望的だ。

 何もかも、絶望的だ。

「アナタ!」


 まさか私が、こんな目に遭うなんて予想出来なかったからだ。

 いや、予想する事自体、不可能なのだ。


「…」


 フツー、気にも止めないのだから。

 だけど…

 妻…徳永宏美が1年前に同じ痛みで悩んでいたのだから、私も少しは認識すべきだったかも。

 妻の苦しみを、今まで他人事のように見ていた報いだと言えよう。

 私は今、夕陽に向かって叫びたい気分だ。

 妻よーッ!

 お前の辛い気持ち、十分に分かったゾォーッ!

 お前の痛みを理解しなかった、この愚かな夫を許してくれーッ!

 妻よーッ!

 これからは2人で、この痛みを分かち合おうじゃないかーッ!

 妻よーッ!

 愛しているゾォーッ!

 妻よーッ!


 妻よーッ!

「うるさーい!」

 その愛する妻…徳永宏美である私は主人…晃の腰辺りを拳でガツン!

「あ痛ァーッ!」

 腰を押さえ、苦痛な叫び声を上げる主人。

 一瞬、金縛りに遭ったような感覚になる。

 ハッと気付いた主人は辺りを見回した。


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