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阿婆擦れ
【純愛 恋愛小説】

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阿婆擦れ-5

優香はその日の内に荷物をまとめて家を出た。船が港を出たころ、風に当たりにデッキに出た。街の明かりが遠くに見えた。

あの明かりの向こうに雄大がいる。雄大の驚いた顔を思い出すと可笑しさが込み上げて来た。鈍感な雄大、お節介な雄大、雄大の豪快な笑い声、優しい笑顔が眼に浮かぶ。
お節介な雄大にはうんざりしていたが、いつしか雄大に構われたくて暴れている自分がいた。雄大と将人の会話を、雄大を良く思わない輩がいると伝え聞いたときは、心臓が止まりそうな程だった。雄大は野球部のエースだった。その雄大を巻き込む訳には行かない。そう思うと決断は早かった。

いい女になる。優香には、そのイメージさえ湧かなかったが、決意は固かった。
何の約束もしていないが、何故か雄大が優香を待ってくれているような気がした。





「優香が行方不明?」

雄大は、ひっくり返らんばかりに驚いた。
花嫁修業に出るとの話を聞いたのは一昨日のことだった。
学校から帰ると優香の家へ電話をした。
母親も行き先が分からないと言う。

街の悪ガキにでも捕まっているのか?
確信は無いが優香のことだ、何をしでかすか分からない。
雄大は仲間を集め、手分けをして街中を探しまわった。

何日か探し回ったが手がかりすら掴めない。雄大は心配だった。探し回っているうちに、優香への思いをはっきりと知った。自分の嫁になる娘。自然とそう思えた。

優香の母親から連絡があり、祖父の知り合いの処で花嫁修業をしていると連絡があった。場所については、祖父が優香との約束だと母親にも教えないのだという。

ある日、優香から一枚の葉書が届いた。元気でやっている。それだけしか書いていなかった。雄大はいたたまれず葉書の消印を頼りに、野球に差し支えない平日に学校を休んで、その港町へと向かった。

日中は優香が働いていそうな街中をひたすら歩いた。体力だけは自身があった。
夜の街も歩いた。優香がそんな処に居るとは思わないが、もし見つければひっぱたいても連れて帰るつもりだった。何より宿泊費などなかった。

雄大は、小遣いを貯めてはその港町に向かい、ひたすら歩き続けた。
何度か通ううちに、飾らない素直な人柄と異国情緒が漂う美しい街並みを持つ、その港町が好きになった。優香は、いい女になると言った。この街で、いい女になった優香に出会うことを思い描きながら歩き続けた。


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