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堕胎
【家族 その他小説】

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堕胎-1

分かってたのよ、最初から。
こーゆう結果になるんだろうなって。


だってそうじゃない。
周りの声は反対意見ばっかでさ。

若いとか
早いとか
順番が違うとか


もううんざりだ。


早く終わらせてよ。
早く忘れたいのよ。
全部全部全部………



赤ん坊は、母親の胎内でじっと耳をすましている。
母親はもちろん、家族の声も犬の鳴き声、風や雨の音も、その小さな耳と脳で受け止める。

やがて誕生する時。
ゆっくりゆっくり産道を通り過ぎる間に胎内で得た知識を忘れていくのだ。




でも、強引に引きずり出されるあたしには関係ない事。

忘れたいのに忘れる猶予さえ与えてもらえない。

それが、あたし達。


あぁ、ついにその時がきた。

冷たい金属があたしに襲いかかる。
捕まらないように何度か避けたけど、ダメだった。

一瞬だった。

これは痛いという感覚。
目が見えなくても分かる、強烈な眩しさ。

外の世界の匂い。
それから…


声が聞こえる。

胎内で一番たくさん聞いた声が泣いてる。

ごめんね
ごめんね
ごめんね



やめて。
そんなに謝らないで。
泣かないでよ。

あなたの事、恨めなくなるじゃない。

本当ならその腕に抱かれる筈だったのに。
こうなるって分かってても夢見てたのよ?
一秒でもいいから笑いかけてって―――




謝るのなら、もう二度と同じ過ちをしないで。

あたしに悪いと思うなら、ちゃんと生きてみせてよ。

そして、お願いだから、あたしを忘れないで…


…お母さん―――



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