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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? 第二話「励ましてあげタイッ!?」-7

**――**

 里美の帰り道は紀夫のそれと逆方向。いくら自転車とはいえそれなりの距離になるのが面倒だったが、それでも彼女を守るのが本来の役目なのだと無理に納得する。
 それに先ほどまで悟もいたのだ。彼が一人で行動を起こすかは不明だが、もし二人きりで遭遇したらそれだけでも辛いのではないか? そんな老婆心が紀夫にはあった。
「ねえ、部室で何してたのよ」
 もっとも里美の目的は別にあるらしく、十数分歩いて初めてでたのは部室での続き。
「別に何も無いよ」
 そう、何も無かった。が、あと少し彼女達の到着が遅れていたらあるいは?
「先輩とあんなに顔近づけちゃってさ、キスしそうだったじゃない」
「そんな、キスなんてしないよ。第一、俺はそんなにもてないよ」
「最近調子に乗ってる。理恵とも仲良くしちゃってさ、なんかヤラシイの」
 里美が路肩の小石を蹴ると、からんからんと音を立てて転がっていった。
「部員と仲良くしちゃいけないの? 俺は香山さんだけのマネージャーじゃないんだよ?」
 雑用以外にもフォームの録画編集など、それなりの仕事をこなすようになった紀夫はだんだん部の雰囲気に馴染んでおり、里美の後ろをついて回るイメージも薄れていた。
「俺だって。ヘンナノ」
 まさかの正論に返す言葉を失った里美は話と一緒にそっぽを向く。
「なにがさ?」
 不機嫌な彼女の表情を覗き込もうとするも、頑なに拒まれてしまう。
「ねえ、ねえってば!」
 それでも食い下がる紀夫に里美はどこかしまりのない笑顔のような怒り顔で振り返る。
「だって君、前まで僕だったでしょ? 僕、僕、僕、あーキモチワルイ」
 両肩を抱きしめて震えてみせる里美に、紀夫は彼女が一体何に腹を立てているのか分からなくなっていた。
「なんだよ、俺って言ってるんだからいいだろ?」
「俺だって、調子こきすぎー」
「さっきから変だよ香山さん」
 売り言葉に買い言葉、かみ合わない感情に見えない心模様は螺旋を描き、ケンカ腰で詰め寄る始末。
「何よ、もとはといえば君が変だからいけないんじゃない!」
 先ほどと同じく向かい合って口角泡を飛ばす二人。夕日も西の空に消え、互いの顔もよく見えないせいか遠慮がない。
「僕は普段どおりでしょ?」
「今度は僕? キモーイ!」
「なんだよ、自分をどう言おうが勝手だろ!」
「練習中も理恵のお尻ばっかりみてさ。やらしいんだから」
 前髪が触れ合うとこそばゆさを覚えるが、ムキになった二人はそれを意識的に無視する。今退けばそれは負けを認めることになりかねないというつもりで。
「僕は香山さんの為に……」
「ならちゃんとあたしをサポートなさいよ! 理恵のことばっかりじゃなくて!」
「だから、俺は……あっ……」
「ん、あ……」
 自転車を間に挟みつつ、不思議な引力に吸引される二人の手がサドルの上でそっと触れてしまう。


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