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魔法使いの告白
【女性向け 官能小説】

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魔法使いの告白 2-1

「北野さん。おはようございます」

ゴミ出しをしていると、坂井さんがゴミ袋をもってやってきた。

「おはようございます」

今日は紺のスウェット。
相変わらずボサボサの髪。
彼はゴミ袋をおくと、口元を押えて身体を折るように下を向いた。

「…あふ」
「あの?大丈夫ですか?」
「ああ、ごめんなさい。眠くて欠伸がね」

坂井さんはすぐに顔を上げた。
ボサボサ髪で半分隠れた目元は優しげで大抵笑っている印象がある。

「なんだ…」

少し安心する。ここで、倒れられても困るし。

「これから会社ですか?いってらっしゃい」

彼が手を振ったので、会釈しながらつられて手を振った。
朝、出勤時に見かけるのはゴミの日だけだ。
さすがに学生ではないと思うが、なんの仕事をやっているんだろう?
見かけるたびに思う疑問。
くっ。
私は坂井さんに背中を向け歩きながら、さっきの光景を思い出すと我慢できなくて笑った。





イタリアンのお店で待ち合わせ。
19:15。私はエスプレッソを頼んでゆっくりと味わっていた。

「ごめん、待った?」

スーツ姿の孝文。

「ううん。でもエスプレッソ頼んじゃった」
「そう。食う?」
「もちろん」

ウェイターにメニューをもらってパスタを注文した。

会うのは1ヵ月ぶりだ。
孝文が研修で県外に1ヵ月出向状態だったためだ。
ケイタイは研修中となると電源が切れていることも多く、もっぱらメールで連絡していた。
こうして会えると嬉しい。
孝文の笑う顔を見ていると、ここ1ヵ月抱えていた寂しさみたいなものがなくなり、ホッとした。

カルボナーラは美味しいし。
ジェラートも美味しい。

「面白い店を教えてもらったんだ。いこう?」
「なんていう店?」
「『BlueMoon』だったかな」
「へえ」

なんだかオシャレな名前だと思った。

「それって、ショットバー?」
「まあ、そんなとこかな。あ、もしかして行ったことあるの?」
「ないよ。なんだかオシャレな名前だから、そうかなって」

私はグラスの水で口を湿して席を立った。


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