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「アジアの闇を追え!」
【ミステリー その他小説】

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「アジアの闇を追え!〜前編〜」-2

 俺たちは意を決して第一報を打った。列島を凶悪事件のニュースが駆け巡った。だが、俺たちはこれで記者クラブにも出入りできなくなり、警察からの情報提供は絶望的になった。社内には異様な高揚感が漂っていた。他社はどうでてくるだろうか? 
「デスク、ア○ヒ、まい○ち、ニッ○イはスルーです。ただサン○イがベタ記事で取り上げましたよ。余罪、共犯者の可能性あり。踏み込みましたね、サン○イ」
 普通新聞は抑制気味の報道をする。可能性に触れるということは、ほぼ間違いなくそれについての続報を打ってくる。
「テレビはどうだ?」
「N○K夜7時のニュース、スルーです。報○テ、スルー、ニュー○23もスルーです」
「民放はデンソーが縛りをかけてるからな。報ステのスポンサーなんてほとんどデンソーが付けただろ」
 デンソーは広告業界のガリバー企業だ。外食産業への悪影響を懸念する日本フードサービス協会やさわやかランチの大株主のI商事などがデンソーを通して圧力をかけてくることは容易に想像できた。

 その翌日、変な事件が起こった。元暴力団員が家族を人質に立てこもり、現場に向かった警官一人が狙撃された。その警官は現場付近で俯せに倒れたままで、救出することもできない、その映像が報道番組で延々と流れている。水谷さんが言う。
「しかし、このタイミングで何でこんな事件が起こるんだろうな。さわやかランチ事件が吹っ飛んじまったじゃねえか」
「テレビジャック狙ったんですかねえ、マジで」
「どこの組だ?」
「雑貨屋です」
 雑貨屋とは隠語で、山岸組6代目組長が率いる名古屋の博道会のことだ。なぜ雑貨屋と言うかというと、下部組織に強制的に雑貨を買わせ、その見返りとして上納金を吸い上げていたからである。
「雑貨屋とデンソーの連係プレーっすか? 怖えなー」
 ここでマル暴の勢力図について少し触れておく。いまのマル暴は、空港利権を握る者が実権を握ると言っても過言ではない。空港には不動産、建設、土木、食品、人材派遣、さまざまな利権が絡みその規模も大きい。かつてその利権を巡って抗争事件も起きている。かんくう利権である。最初にその利権を手にしたのはたくみ組だった。ところがそれを妬まれて組長が射殺され、陰謀を仕組んだ側といわれる山けん組が山岸組のトップに躍り出た。
 これを真似たのが雑貨屋だった。雑貨屋は盟友関係にある大阪の極真会と結んで名古屋セントレア空港利権を独占した。これにより山けん組を追い落とし、山岸組ナンバーワンの地位を奪ったのである。このとき、民間企業で空港利権に与った者がいる。世界的な地元自動車企業Tとデンソー社で、雑貨屋とデンソーはここで繋がりを持ったといわれている。

 数日後、またおかしなことが起こった。店の関係者らしき人物が犯行現場の店の看板を取り外し、解体作業を始めたのである。
「おい、どうなってんだ、福。あいつら店の解体始めたぞ。警察は黙って見過ごすのか?」
 するとデスクが出てきた。
「解体っていっても入り口の方だけじゃないのか? まさか犯行現場は保存してあると思うんだが」
「でもミズさんの言うように警察は信用できませんよ。それに犯人は店の奥で被害者に睡眠薬飲ませてますよね。食品衛生法絡みで保健所とかも動きそうなもんじゃないですか?」

 事件はほどなく次の段階に移行した。事件の重大性に比して極端に少ない報道。ここからネットの熱狂が始まったのである。ヤ○ーファイナンスの投稿数は連日ダントツの1位、誰も株のことを書く者はいない。2○ゃんねる、ミ○シィも凄まじい状況になった。そこにはいまだ公式会見すら開かない警察、報道しないマスコミへの怒りが沸騰していた。
 俺がパソコンをいじっていたらやがてデスクがやって来て、ネットの投稿を読み始めた。


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