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ネコ系女
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ネコ系女 #3-1

開店前のくれいむは少し薄暗い。電気は天井の中心を走る蛍光灯のみ。他は着けていないし、入り口全体の壁を占める窓にはブラインドを降ろしているからだ。
明るさのあまり必要ない開店前と閉店後は経費削減。プチエコって奴だ。
開店中に流れている有線も今は付けていない。なのでフロアはシンとしていて、裏のキッチンでケーキを作る加納さんの音がこちらまで聞こえてくる。

「昨日はどうだった?」

今は開店前の掃除中。毎日、店の中は綺麗にしておかないと気がすまない。


【ネコ系女は綺麗好き】


床にモップを掛けながら姫代が言った。

「あーもー全然ダメ。ハズレだった」

私はショーケースや棚などを拭きながら答えた。
タマのあの顔を思い出すと胸の当たりがグルグルとして、何ともやるせない気持ちになるので

「みんなダメ。すっごいつまんなかった」

そうであったと思い込むように、声に出して続けた。

「そうなんだぁ。残念だったね」

「てかさ聞いてよ!昨日のネコのお客さんいたでしょ」

うんうんと姫代が頷いた。

「あのネコちゃん貰ってくれた人でしょ?」

「そう、それ。それがさ、いた訳!合コンに!」

「え!?うそ!?」

姫代のモップを掛ける手が止まった。

「ホントだって。もうそいつが一番厄介で…。あいつがいなければもう少しマシな合コンだったろうね」

「へー。すごい偶然もあるもんだね」

姫代の手がまた動き出した。チラリと姫代を見ると、何となく口元が笑っているようだった。
何かいいことでもあったのかな。

「どうしたの。何か嬉しそうだけど?」

「ん?だって」

顔を上げた姫代はやっぱりニッコリと目を細めていた。

「運命みたいだなと思って」

姫代の言葉の意味が分からなくて数秒、私は固まった。

「運命…って、あの運命!?ちょっとバカなこと言わないでよ、バカ!」

そもそも運命だなんてありっこない。百歩譲って運命だったとしても、己の力でねじ曲げてやりたい。

「うーん、そうかなぁ。あのお客さん、結構イイ人そうに見えたのになぁ」

姫代はボーッと宙を眺めた。
イイ人だよ、あんたと同じで恐ろしい程イイ人。
言い掛けて辞めた。

「うんうん、良い感じ良い感じ」

宙を眺めたまま、姫代は頷きながら微笑んだ。
きっと頭の中で私とタマを並べているんだろう。その光景は姫代には良い感じに写るらしい。


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