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エンジェル・ダスト
【アクション その他小説】

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エンジェル・ダストD-8

「どうしたんだ?急にアパートに引き返して」

 夜。恭一と五島は、室内で夕食を摂っていた。

 ──このクルマでは目立つ。

 そう考えた恭一は、馴染みの業者にルノー4を預けると、代車に用意された古いシビックに乗り込んだ。

「見た目は古いけど、エンジンとサスペンションは最高だからさ」

 店主の言葉に、恭一はエンジンを掛けてアクセルを踏み込む。まるで、モーター・サイクルのようなエンジン音。

 ──こいつなら逃げ切れそうだ。

 恭一の乗るシビックは、軽いホイール・スピンを残して道路へと出て行った。
 店主は見送りながら、最後に残した言葉の意味を考えていた。

 2人は、缶詰だけの食事を風呂場で摂っていた。ここに戻る際、尾行の有無を確認したが、万一を考えて外に光が漏れない場所にだけ明かりを灯す。

「このままじゃ、オレ達もやられる。だから作戦を変える必要があるんだ」
「陸自の特殊部隊と公安警察か?」

 五島の問いかけに恭一は頷いた。

 ──オレが公安に居た頃から、自衛隊の情報部隊に公安から、警視クラスの幹部が出向していた。 それはあくまで、自衛隊の目付けとしてだったが、その二つが共通の目的のために手を組んだ。

「──うとましい仲─なはずの防衛省と警察庁が手を組んだ。しかも、オレ達を襲ったのは二つとも──対テロ─に関して容赦無い奴らだ」

 状況を把握した五島に、焦燥が色濃く映る。

「これから、どうする?」
「オレは明日にも──ある人物─に会に行く。今のままでは、遅かれ早かれ死を待つだけだ」
「そいつは、オレの知ってるヤツか?」
「前の仕事で、プラスティック爆弾を売ってくれた人物だ」

 状況説明を終えた恭一は話題を変えた。

「ところで五島。柴田ふみの会社以外の連絡先は調べたのか?」
「…実は、柴田ふみは朝陽新聞社を退職していた」
「だったら……」

 恭一の眉間に、みるみるシワが深くなった。

「オレのチェック不足だった。彼女は今、N県のM市に居る」
「何故、辞めたんだ?」
「それは分からん。ただ、4ヶ月前に社学部からスポーツ・芸能部に異動させられ、2ヶ月前に退職していたようだ」

 半年前に大河内が殺害され、担当の佐倉はひと月後に異動。そのひと月後に、今度は佐倉と懇意にしていた柴田が異動させられた。

 ──繋がるな…。

「五島。柴田はM市に帰って何をしてるんだ?」
「地元の新聞社に勤めている。連絡先は……」
「そういえば、間宮が言っていた…」
「そう。間宮が言った──北新大学病院もM市だ」

 ──こいつは好都合だ。準備が整ったらN県へ行くか。しかし、しかし、これが罠だったら。

 恭一は思考を巡らせる。が、結論は夜明けまで出なかった。


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