投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿
【ファンタジー その他小説】

電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿の最初へ 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 38 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 40 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿の最後へ

電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―追憶編―-2

 真琴が八歳の時、真琴は両親と共に海外旅行に出掛けた。
 初めての海外旅行で、初めての飛行機。何もかもが新鮮で、窓から見る雲の海は、夜闇の中、月明かりで白く浮かび、神秘的で、いつまでも眺めていたかった。
 だけど唐突に視界は赤く染まる。まず音が、体を揺らした。眠っていた他の乗客も一斉に起き、パニックが起きた。
「父さん、母さん!?」
 スチュワーデス(この頃はそう呼んでた)が落ち着くように、といったようなことを言ってたみたいだが、パニックになった乗客は、重なる爆音に更なるパニックを呼ぶ。
「真琴、ごめん、ごめんね」
 母の泣きながらの謝罪は、未だに何に対してかわからなくて、だからこそ強く印象に残っている。
「目を瞑りなさい!」
 普段は穏やかな父の怒鳴り声に、反射で目を瞑る。

 衝撃。

 飛行機は墜落した。
 エンジンから炎を吐き散らして。
「あなた……あなた!!」
 母は泣き叫びながら、真琴を。
 真琴と母を炎と鉄の欠片から身を挺して護った、父を呼んでいた。
「……逃げ……なさい」
 真琴は泣くばかりで、母も父を残して逃げるなんて、とても出来ないと、拒絶していた。だけど、
「早く!!」
 父は命の灯火が消えようとしているのに、母娘を叱咤したのだ。
 母は真琴を抱えて、泣きながら炎と爆発から逃げる。
 その間もずっと母は、謝っていた。父を置いて逃げ出したから? 真琴は未だに母のごめんなさいの意味が分からない。
 しばらくして、母は立ち止まる。母は言った。
「ごめんね、真琴……お母さん、行かなきゃ」
 どこに行くの? そう訊けたかは、悪夢を見た時のように記憶が曖昧で、分からない。
 だけども母の顔に、決意と覚悟があったことだけは、目に焼き付いていて――

 真琴は その飛行機事故の唯一の生存者となった。
 明日はその事故が起きた、両親の命日だ。


電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿の最初へ 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 38 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 40 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前