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僕らの関係 プロローグ きっかけ
【学園物 官能小説】

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僕らの関係 残るヌクモリ。-8

「ふむ……」
「んちゅ……」

 先ほど首筋を這い回ったナメクジのようなものが、唇を割ってもぐりこんでくる。
ぬるりとした唾液が口腔内に注がれる。陰茎を咥えるときよりも刺激は軽いはずなのに、受動的であることが、心の余裕を奪う。

 潤いのある唇は塩辛い。白桃みたいな頬をしている彼なら甘いのではないかと期待していた分、落胆してしまう。
 キスは思ったほど快感をくれない。それどころか不快感を煽る行為だ。
 結論を急ぐ由香は幸太の唇から逃れようと顔を振る。だが、幸太もそれに追いすがり、そして、舌先が触れる。

「ん……あ、あれ……んちゅ……」

 幸太の後頭部に手を回し、強引に求めてしまう。
 高い鼻は意外とデメリット。キスをするときに邪魔になるし、鼻息が当たってこそばゆい。それに汗の匂いがしてせっかくの唇の快感が薄れてしまう。

 いつの間にか目を瞑っていた。

 キスをするときに何故目を瞑るのか?

 その理由が少し分かった気がする。
 唇に意識を集中したいからだ。

「やむ、んゆう……ふぁう……んふぅ……」

「怖いな。……あ、幸太ちゃんじゃなくてエッチなことがだよ? 他の人にされるの、初めてだし……」

 力ない手で必死に幸太の手を握り返す。

「由香ちゃん……いい? 大丈夫? きもちいい?」

 リズミカルに前後する腰着きが着実に二人を追い込む。
 愛液を一人分泌するのは恥ずかしいが、ゴムの内側では彼も涎を垂らしているのだろう。
 もう少しで女に触れられるのに、未だお預けを言い渡す自分は酷い女と思いつつ、調子に乗った幸太にはよい薬と、一人納得してしまう。

「あ、ああ、もうダメ……私……」

「うん、イコ、僕と一緒に……ね?」

「あ、すごい……幸太に私……いかされひゃうううん!」

 彼の最後のストロークは行ったまま戻ってくることが無かった。自分の上でしゃちほこ張る彼の表情は射精させるときに何度も見ている。
 彼はしばらく張り詰めたあと、ぐったり力を失った。それは彼女も同じ。身体中を走り回る快感は反射に近い痙攣を促し、火照った身体のなかで弾けとんだ。
 普段から運動不足気味の由香は息が上手くできず、「ひっひっ」と短い呼吸を繰り返す。喘息の症状に似ている呼吸が過呼吸を引き起こしたようで、目眩が襲う。

 視界と嗅覚、それに全身が異常を訴えるのに、弛緩した身体はのん気に喘いでいるだけ。

 突然重いものが覆いかぶさってくる。胸元に触れるそれは、ドクンドクンと早い鼓動を伝え、徐々に熱と酸素を与えてくれた。

 初めて訪れる性の快感が、これまでの葛藤を綺麗に洗い流してしまう。
 必死に積み上げて、一つの刺激で崩壊してしまう。快楽というオマケつきで。

 ――なんだかトランプの塔みたい。

 力なく腰を動かす彼を押しのけるのは物理的にたやすいこと。ただ、もう少しトランプを並べていたいと思う由香だった……。


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