古からの守り-1
古より行われている仕来たり。
それが俺のこの国にはあった。
姫様の護衛という仕来たり…
昔からの仕来たり…
内容は簡単だ。
ある程度護衛教育を受けたら姫に仕える。
そんだけの話だ。
そして姫と言っても自分の国のじゃない。
他国の姫だ。
というか俺の国にはまだ姫が存在しないんだが…。
他国から護衛を雇う。
これ以上にない危険に思える。
一国の姫、つまり王と妃の間に生まれた娘の護衛を他国に任せるのだから。
だが古よりの仕来たり…。
それが他国を信用させる糧となっている。
故に色々な国より護衛依頼が舞い込んでくる。
そして俺もそんな護衛依頼を任された身であった。
「とある大国の姫を護衛せよ」
そう上役から告げられ渡された資料を見る。
護衛先の国は世界一と言われる大規模な国の姫。
その国からの護衛依頼はさほどめずらしいものではない。
年に一度、護衛依頼をし、最も優秀な者をこの国から一人引き抜いている。
依頼してくるのはいつもの事なんだよ…
いつもの事なんだけどちょっと指名ミスではないかと自分で思ってしまう。
「ちょっと質問…」
っと上役にタメ口の俺。
「ん?なんだヤナキ?」
「なんで不優秀な俺なわけ?」
有名な国が優秀でない俺を選ぶ根拠が気になる。
勉強はできない。
言葉使いはあまり良くない。
護衛に必要な強さなら多少自信はあるが…。
「知らん…依頼者に直接聞いてくれ」
「はぁ…」
折角三流国の姫でもついて「護衛」って感じの名だけのんびりとやろうとしたんだが…。
予定が大きくずれた。
「まぁ頑張ってやるんだな」
「了解〜」
やる気のない返事をする俺。
上役が言葉使いの面で怒らないのはもう慣れているからであろう。
というか呆れ返っていると言ってもいいかもしれん。
まぁとにかくそんなこんなで大国の城下町にやってきた。
市場は賑わい活気ついている。
流石大国の市場と言った所だろう。
店に目を向けつつ城へと続く道を歩んでいた。
そのつもりだ…。
「迷った…」
城が見えるから見える方向に進めばいいと思っていた自分が馬鹿だった。
城を方向を見て進んでいたためなんも問題ないと思っていたが知らぬ間に細い路地に入ってしまっていたのだ。
「何処だよここ…」
そんな事を思いつつ辺りを見回したが人一人いない。
取りあえず耳をすまし、ざわざわと人の声のする方へと行ってみることにしようと足を進めようとした。