投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

エンジェル・ダスト
【アクション その他小説】

エンジェル・ダストの最初へ エンジェル・ダスト 29 エンジェル・ダスト 31 エンジェル・ダストの最後へ

エンジェル・ダストC-4

(やはり。宮内は今もマークされてるのか)

 恭一は考えた。奴らがここを見張るというは、自分が幸子に会いに行った事は勿論、小包の中身が何かを知っているに違いないと。

(ヘタすりゃ盗聴、盗撮されてるかもしれんな)

 恭一は先ほどのメモだけを抜き取ると、手帳とブリーフ・ケースを梱包し直した。

「ちょうどいい時刻だ」

 左手に小包を抱え持ち、オフィスを後にした恭一は、地下駐車場に停めてある自分のクルマに乗り込もうとした。

 ドアノブに掛ろうとする手を離す。

(オレが奴らなら、トラップを仕掛けるな)

 薄暗い駐車場から1階に上がり、ビルの表へと出ると徒歩で近くの大通りに向かった。
 距離にして200メートルあまり。ゆっくりとした足取りで進んで行くが、追って来る者はいないようだ。

 通りに出ると、すぐに流しのタクシーに出くわした。
 恭一はタクシーを止めて乗り込むと、

「このまま真っ直ぐ進んでくれ。後で行き先は伝えるから」

 無茶な依頼に運転手は少し困惑した顔をしたが、すぐに“分かりました”とだけ告げるとタクシーを発進させた。




「何とか…間に合ったな」

 10室しかない小さなアパート。むき出しの階段には申し訳程度の雨避けしかない。その階段を恭一は登っていた。
 2階のある部屋の前に立つと、ドアがガチャリと開いた。

「待ってたぞ」

 現れたのはスキンヘッドの男、五島英文だった。
 かつてのパートナー。しかし、CIAから情報料として1億円を奪って以来、恭一同様、産業スパイからは足を洗っていた。

「1年ぶりだな…」

 感慨深げな恭一に対し、五島はあまり良い顔をしない。

「まあ、中に入れよ」

 玄関を1歩入った途端、恭一は驚いた。以前はゴミ溜めのような臭いがしていたのが、柑橘系の爽やかな香りに満ちている。
 部屋もそうだった。キレイに整理整頓され、フローリングも磨きが掛かっている。

(そういう事か…)

 テーブルを前に座る五島の落ち着かない様子が、恭一には微笑ましく映った。

「…で?仕事の話って」

 唐突に切り出したのは五島の方だった。

「ところで、今も“掃除”はやってるのか?」
「ああ、あれが1番金になるからな」
「そうか。だったら、ウチのオフィスをやってくれないか?とりあえず1ヶ月間、毎日」
「毎日だって!」
「そう、毎日。それと、地下にあるオレのクルマに仕掛けられたトラップの解除も」

 これにはさすがの五島も呆れ返った。


エンジェル・ダストの最初へ エンジェル・ダスト 29 エンジェル・ダスト 31 エンジェル・ダストの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前