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恋の奴隷
【青春 恋愛小説】

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恋の奴隷【番外編】―心の音L-7

「葉月君と私は付き合ってるの」
「う、そ…」

頭が真っ白になって、胸がズキズキと痛む。

「人のものに手を出して、よく平気な顔して笑っていられるわね。あなた頭おかしいんじゃない?」
「……っ!」

冴島さんは私の髪を掴んで、上向かせた。我慢していた涙が、目の端に浮かび上がって。
身体の痛みなのか心の痛みなのか、それともそのどちらともなのか。考える冷静さなどなかった。

「泣いたってムダよ」

余裕をたっぷり含んだ笑みは、恐ろしく楽しげで。逃げることも逆らうことも諦めて、私はきつく目をつぶった―――。



「随分と卑怯なことをするね」

聞き覚えのある声に目を開けば、何故かそこには葉月君が佇んでいた。

「だ、だって…この女がいけないのよ、私は葉月君だけを愛しているのに!」
「あんたが言うと、とても陳腐な言葉に聞こえる」

葉月君は鋭い目をして、皮肉っぽい笑みを浮かべた。

「どうして僕があんたに近付いたか分かる?」
「え……?」
「葵を好きだと言うから興味を持った。葵が気に入らない。だから、僕のものにしてみたくなった。一回寝ただけで手に入るなんて、簡単過ぎてつまらなかったけどね」
「そんな…」

葉月君は恐ろしく冷たい声で淡々と話して。冴島さんの顔色は、みるみるうちに青くなっていく。


『僕のものになりなよ』

いつしか聞いた言葉。ノロへの当て付けのために、葉月君は私に近付いたのだ。最初から分かっていたはずなのに。私はすっかり忘れていた…違う、そうじゃないと信じたかったの。
葉月君が私に向かって笑ってくれるのが嬉しかった。言葉は少なくても、優しい人なのだと思った。葉月君の隣はとても暖かくて。だから、つい甘えていた。
逃げてばかりいた私に、神様が与えた罰なのだろうか。今になって、私は葉月君を好きだと確信してしまった。
だって、こんなにも胸が苦しくて。泣きたいくらい悲しくて。

―それでも、守りたいと思うのだから。

「…最低っ!」

侮辱されて怒った冴島さんは、血相を変えて葉月君に掴み掛かって。私はそれを止めようと、二人の間に飛び込んだのだけれど。

「夏音っ!」

興奮した様子の冴島さんに突き飛ばされた私は、階段から足を踏み外して。
大きな音と同時に、身体中に衝撃が走る。

誰かの悲鳴が上がる。
薄れる意識の中で、葉月君が私の名前を何度も呼ぶのを聞いたのだけれど。
私はそのまま意識を手放した……。


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