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恋の奴隷
【青春 恋愛小説】

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恋の奴隷【番外編】―心の音L-4

「あらっ!あのお店もなっちゃんに似合いそうな服ばかりだわ〜!」
「しゅ、朱李さん!」

朱李さんは、私に似合うからと言って結構な値段がするであろうものも、まるでスーパーで野菜でも選ぶかのように、あれもこれもと手に取っていってしまう。

「遠慮なんてしなくていーのよ?私が誘ったんだから!」

そうは言ってもやはり申し訳なくなってしまうわけで。お店の外で待っているからと、やんわりと断って、残念そうに眉を下げる朱李さんに笑顔で手を振って。そして、大荷物を抱えながら朱李さんに引きずられるノロの後ろ姿を憐れんだような目で見送った。
ふぅっ、と一息ついて、なんとなく辺りに目をやると。高級感の漂うこの通りには、やはり見るからにお洒落なお店が堂々と立ち並んでいる。ここにいる自分がとても場違いなように思えて、脇道に歩いていくと、この街並にはとても不釣り合いな、ちっぽけな雑貨屋さんが目に入った。一目見た感じでは、やってるのかやっていないのか分からないくらい、薄暗い店内。しかし、床上造りのポーチ部分には、木の実で飾り付けられた黒板が深いブラウンの椅子に立て掛けられており、白いチョークでOPENと書かれていた。その証拠に扉は開かれたままである。木造の建物は温かみと親しみを感じさせた。ふらりとお店の中に入ってみると、ムスクの香りが私を包み込む。店内は、シルバーのアクセサリーや、所々ステッチが施されたテーブルクロス、革のポシェットなど、どれも繊細で素敵な小物ばかり。ぐるりと店内を回って見ていると、ビーズと石を組み合わせたストラップに目が止まった。一つ一つ石の色みや、ビーズの色が違っている。

どれにしようか、手にとってまじまじと石の色みを見比べていると、

「夏音」

不意に後ろから声を掛けられ、私は振り返った。

「あ、葉月君。ごめんなさい、勝手に…」
「いいよ、まだ葵達はお店の中だし。…どれが欲しいの」
「えっ?」

戸惑っていると、私が候補に持っていたストラップの中から一つを取り上げて、葉月君は支払いを済ましてしまった。

「携帯貸して」
「あ、うん」

おずおずと携帯を差し出すと、葉月君はそれに買ったばかりのストラップを付けた。葉月君の手の中でピンク色のローズクォーツが揺れている。

「僕のも、ほら」

いつの間にか、自分の分まで買っていたらしく、黒のジルコンが入ったストラップを、自分の携帯にも取り付けて嬉しそうに私に見せた。

「夏音と同じ」

恥ずかしそうに下を俯きそっと微笑む葉月君がとても可愛くて、私も自然と笑みが零れる。

「ありがとう。大切にするね」

ポケットから覗く色違いのストラップ。周りから見たらとても目立っているような気がして、なんだかそわそわと落ち着かない。けれども、さっきから顔の筋肉は緩みっぱなし。

「あら、何かいい事でもあったの?」

私の顔を一目見て、朱李さんが不思議そうに聞いてきたけれど。葉月君は何事もなかったかのように素知らぬふりをして。

「ふふ、別に」

まるで、二人だけの秘密だよ、と言われているようで、私はにやけた笑みを浮かべながらそう言った。
すっかり舞い上がっていた私は、ノロが眉を寄せて険しい顔をして私達を見ていたことに、ちっとも気付いていなかったのだった。


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